ヤクザ者から堅気へ向けての再出発という主題に付随した牧歌的な空気が気持ち良いだけに、幾度となく外部から持ち込まれる「暴力」が贅肉となり鈍重に。
モノクロ新珠三千代の艶っぽさ。あのビンタはむしろご褒美

【没後十年記念 映画俳優 池部良】@シネマヴェーラ

養蜂業の車に隠れていた池部良、仕事をくれというので、雇うとよく働く。そして、組に追われていることが分かる。嫌がらせ。馬を盗まれる。とりかえしてくると、子供が破傷風馬で。ワクチンを取りに走る。そんな感じで話が進むのだが、話の焦点が合わないまま終わる。

面白い。牧場を舞台に、かたぎになるために養蜂を手伝う池部良と、堺左千夫の嫉妬と欲望が絡み合う。

クライマックスは、病気と追手という二つの話を出して盛り上げる。

池部良が野の花を見る場面、ボートに乗る場面、田崎潤が尺八を吹く場面（そして気がつくと堺左千夫が後ろに）など、日常が素朴でとても良い。

良ちゃんは珍しく男っぽい役で、シネスコ画面に手足の長さが映える。田崎潤は池部良を見守るものすごくいい大人で、堺左千夫は今まで見たことのないようなゲスい役。気の強い新珠三千代も良かった。

谷口千吉の作品はアクションやサスペンスでも、どこか心温まるのが好き。

「没後十年記念　映画俳優　池部良」