デニロ

青べか物語のデニロのレビュー・感想・評価

青べか物語(1962年製作の映画)
4.0
1962年製作公開。原作山本周五郎。脚本新藤兼人。監督川島雄三。2006年フィルムセンター(シナリオ作家新藤兼人)で観ている。そうか、新藤兼人脚本だったか。

舞台は浦安ならぬ浦粕。ごちゃっとした漁師町で、湿地帯から浅瀬となり海へと続く、そんな街だったようだ。本作が公開されて数年後その海を埋め立てて今の浦安が出来上がる。友人がマンションを購入したのでその地を幾度か歩いたこともあるし、毎日の通勤での停車駅でもあったのでその乗降者数の多いことも覚えている。本作の風景はもはやない。川島雄三の演出は将来の浦安を見通したかのようにカラリとしていいて湿っぽさは微塵もない。

主人公のスランプ気味の作家森繁久彌が浦粕の地でぼんやりと気休めをしようとするのだが、そこは人間の原始的な営みの臭いが立ち込める地だった。13歳の浦粕一汚ったない乞食少女/南弘子の真白き太腿に目を背けた失礼にカツ丼を奢る。そんな少女の身の上話を耳にしたりもする。ある日その少女の母親が彼女を迎えに来るのだが彼女は毅然として・・・。退職金代わりに貰った蒸気船に住む老船長左卜全。彼の記憶は男の子の永遠に捏造される記憶として哀しい。おもい人と引き裂かれ彼女は望まぬ嫁入り。それでも彼の乗る蒸気船が通るたびに家を抜け出て河原で手を振る。いつしか彼女の腕の中には赤子が・・・。そして彼女は亡くなってしまう。雑貨店の息子フランキー堺はようやく嫁中村メイコを娶るが、彼女は宗教の教えに従うとして初夜の寝屋に結界を敷き、フランキーにここからは入らぬように教え諭す。それが数晩続きいつしか中村メイコは元カレと思われる男と出奔する。が、大逆転。北海道で探し求めた嫁を連れ帰る。当時最強の美女のひとり池内淳子。店の吹き流しもとうとうおっ立ったのでした。

そんな様々なエピソードがフェリーニの映画作品の如くにこれでもかと繰り広げられるのです。浦粕での祝祭から離れ行く森繁はまるでマストロヤンニのよう。

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