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ヤンヤン 夏の想い出のふかいのレビュー・感想・評価

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)
4.6
クーリンチェ、恐怖分子と比較するとショットへの拘りはそれほど無くなったのかな?と思うくらい、それほど凝っていない画角の長回しが続く。それゆえ170分越えの長尺で退屈な面もあるのだが、だからこそ脚本に込められた取るに足らない人生の機微が際立つ。(唯一凄いと思ったショットは4台の監視カメラに走っているヤンヤンが順番に映し出されるところか)

「自分の人生だけで手一杯なのに、なぜわざわざ映画を観て他の人の視点に立つ必要があるのか」という根源的な問いと答え。
いつの間にか「半分の真実」だけを見つめて他のものを切り捨てるようになった(=「人生のチャンスなど必要ない)大人達に、彼ら/彼女らの背中を見せてあげるヤンヤンの圧倒的な純真さと知性にやられる。是枝が「ゴーイングマイホーム」でやろうとしたことのルーツを見れた気がする。

追記:
109プレミアム新宿のフィルム上映で再見。ファーストカットから目が幸せすぎる。BGMもすごい。
あの監視カメラショットつなぎが冒頭にも使われてたことを完全に忘れてた。すごい緻密な構成力。
奥さんが鬱になって、隣人が喧嘩してるっていう絶望的な状況のなか窓が消えてすごく綺麗な夜景が映るところの皮肉さが印象に残った。
あと、ヤンヤンが大人の揉め事を理解してるのか理解してないのかよく分からない2場面(初恋相手との再会と、お婆ちゃんが倒れたのでバタバタしてる夜中)が凄く良い。顔が完全に「そして父になる」のあの子だった。
カメラというもうひとつの目を手にしたヤンヤンが、なんとなく抱えていた「人が見えない部分を見せるにはどうしたらいいか」という疑問に対しての解決策=エドワードヤンが生涯かけて伝えようとしたこと
が最後に提示されるところがすごく感動的。イッセー尾形が鳩乗せてるシーン大好き。
「ずっと目を閉じていたい。夢の世界は美しいから」
ふかい

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