ニャーすけ

三十四丁目の奇蹟/34丁目の奇蹟のニャーすけのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

一応、クリスマスなので。

数あるクリスマス映画の中でも、個人的には本作を推す。劇中でサンタクロースの存在が法的に認められる唯一の作品を「クリスマス映画界最強」と言わずして何と言う。

そもそもの発端は、大手デパートの雇われサンタが「自分を本物のサンタクロースだと信じ込んでいるパラノイア」として、精神病院に収容されてしまうこと。ジョン・ペイン演じる弁護士の法廷での主張は完全に詭弁なのに、誰も子供の前ではっきり「サンタなんかいねぇよ」とは言えないため、むしろ検事のほうが苦戦を強いられる展開が笑える。また、渦中の爺さんがサンタクロース本人として立証されていく過程で、判事を初めとする権力者たちの保身や拝金主義、政治的駆け引きが大きく寄与することも含め、全体的にはブラックコメディの要素が強く、そのおかげで単なるご都合主義の甘い話にはなっていないのが凄い。

この軽妙洒脱な法廷シーンが素晴らしいのは当然として、白眉は爺さんの収容前、デパートに客として訪れた、養子縁組でアメリカの家族に引き取られた孤児のオランダ人少女と彼が対面する場面。「イエス・キリストの降誕祭」という本来の意義から離れ、人種や宗教に拘らず、年に一度くらいは大切な人のことを想って穏やかに過ごしましょうという、現代の“ハッピー・ホリデーズ”としてのクリスマス精神を端的に象徴する名シーンには毎回ほろっとさせられる。

「想像力の讃歌」というテーマも、“クリスマス”という概念そのものへの言及であると同時に、映画や小説、寓話などの物語が創作されることの意味、そしてそれら創作物を人々が求めることの意味について深く考察されたもので、学生の頃から多くのフィクションに生きる糧をもらってきた自分のような人間は感動せずにはいられない。
基本的には、今の目で観ても完成度の極めて高い脚本によるウェルメイドなハートウォーミング(&ブラック)コメディなので、クリスマスの定番作品として本作がもっともっと広く認知されていって欲しい……ということをぼく(おっさん)はサンタさんにお願いしました。
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