ゆみモン

オアシスのゆみモンのネタバレレビュー・内容・結末

オアシス(2002年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

まず何と言っても、脳性麻痺のコンジュを演じたムン・ソリの演技が、演技とは思えないほど見事だった。
障害者を演じるのは、あまりに似せると悪いような気がして控え目になりがちだと思うが、ムン・ソリは違う。徹底的に研究してなりきっている。技術的にも体力的にも大変だったろう。

前科三犯の落ちこぼれ男・ジョンドウと重度障害者・コンジュのラブ・ストーリー。
ジョンドウは一般社会的にははみ出し者なので、常識外れの行動ばかり。
コンジュは、ジョンドウが起こした轢き逃げ事件で亡くなった男の娘。出所してきたジョンドウが、被害者家族のところへ「挨拶」に訪れた時に出会う。その行動も、病気見舞いのようなフルーツ盛籠を持って、なんだかピントがズレている。
コンジュは、兄夫婦がいるのに、アパートで一人暮らしをしている。兄が隣人に毎月お金を払って食事の世話などをしてもらっているのだ。が、兄夫婦はというと…コンジュの障害者としての権利を使って立派な部屋に住んでいる。そして、役人が調べに来る時だけ、コンジュを連れて行き一緒に住んでいるように見せるのだ。
コンジュは、家族から自分がどう思われてどう扱われているかは、百も承知なのだ。

ジョンドウは、ありのままのコンジュに接し、一生懸命話を聞いてあげたり、外へ連れ出したり、髪を洗ってあげたりしてあげる。
誰もがやりたいことは、コンジュだってやりたいだろうと素直に思って行動に移しただけなのだろう。

また、実は直前の轢き逃げ事件は、実はコンジュは兄の身代わりに出頭して刑に服したのだった。

ジョンドウとコンジュは次第に心を通わせていき、ある夜コンジュから「一緒に寝てホシイ」と言い出し、二人は愛しあう。
ところが、そこへ兄夫婦が訪ねて来て、ジョンドウは強姦犯として現行犯逮捕されてしまう。
興奮して緊張しているコンジュは、自分の思いを全く伝えられず、ジョンドウも言い訳はしない。

ラストシーン少し前の、拘置所を脱走したジョンドウがとった行動(オアシスのタペストリー?に映る木の影を取り除く)は感動的だった。
ラストは刑務所からのジョンドウの手紙。しかし、誤解が解けない限り、刑を終えても(加害者の被害者である限り周囲が許さないから)二人は結ばれないのにこれでいいのか…とモヤモヤした。
将来への希望が感じられないような…。

障害者への偏見の問題(レストランの入店拒否、刑事の心無い言葉…)だけだなく、家族や社会の問題…等いろいろ考えさせられた。
ジョンドウのキャラクターで、湿っぽくならなかったのが良かった。