安堵霊タラコフスキー

オアシスの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

オアシス(2002年製作の映画)
4.9
イ・チャンドンの久々の新作が発表されるということで、敬遠していたこの作品をようやく鑑賞したが、確かに評判通りの名作だった。

まず主人公のヤバいレベルの自閉症スペクトラム描写に少し引いてしまい、重度のASDというのはこういうものかと戦慄してしまったのだが、それがペパーミントキャンディの主役を演じた俳優と同一人物と知ると驚愕してしまい、その変貌ぶりには目を疑った。

そして脳性麻痺のヒロインもマイレフトフットケアダニエル・デイ=ルイスやレナードの朝のデ・ニーロを髣髴とさせる演技を披露していて、特に終盤の警察署のシーンは実に居た堪れなくて秀逸だった。

そんなヒロインの妄想のシーンで光が蝶々になるところやデート中に普通に歩いたり歌ったりするシーンも非常に感動的で、そんな風に主人公二人が仲睦まじくしているとどんどん愛着が湧いてきて後の展開で哀れに思えるのも素晴らしかった(ベッドシーンまでやられてちょっと引いてしまったものの)。

カメラワークは結構粗かったけど、こんな不器用な純愛を見せられてしまったら感嘆せずにはいられず、本編見た後だと何とも言えない気持ちになるキービジュアル含め、ヴェネチア等で評価されるのも納得の逸品だった。(それだけに今後これを超える作品をイ・チャンドンは作れるのかなと訝ってもしまうが)

それにしても主人公の名前が名無しを意味するジョンドゥだったのには、どういう意図があったのだろうか。