社会に爪弾きされた二人の男が、突如「何も無い(nothing)世界」に放り込まれる。
その世界では、自分たちの「意識」によって″すべて″を消し去ることができる……。
「CUBE」「カンパニーマン」の鬼才ヴィンチェンゾ・ナタリ監督の相当に作り込まれた″異質″な映画世界に対する期待が大きかっただけに、少々肩透かしの感は否めない。
この世界は何なのか……?すべてを消し去った後にたどり着くものは……?
特異な世界観に包まれるままに、映画の「意図」を待ち望んだのだけれど、明確な答えは得られることが出来なかった。
奇抜なアイデアから端を発する、綿密なストーリー展開を予想していたのだけれど、監督の狙いはそういうことではなかったようだ。
とにかく″アイデア″ありきで、二人の男の「予想不可能」な可笑しな生活を楽しむための映画だった。
それならそれで悪くはない映画だと言えるが、やはり多くの観客はそういうわけにはいかないだろう。
この監督に期待するのは、そういうものではないからだ。
ただただ真っ白な何も無い世界で、ひたすらに二人芝居を繰り広げるには、ストーリーの踏み込み方が甘すぎだと思う。