単純に、ビジュアルがアガサ・クリスティを彷彿させるような、ゴージャスな館ミステリーであり、その古典的な魅力に引き込まれた。
そんな、過去のミステリーへの敬意を払いつつも、本作は非常に現代的なテーマを取り込み、単なるロジックやトリックを解き明かして終わらない作品となっている。
予測しようとも出来ない展開と、その予想をいい意味で裏切る構成の妙は、探偵ブノワが言っていた、ドーナツの輪がぴったり埋まるような気持ち良さがあった。
ポップでエンターテイメント性もあり、アガサ・クリスティらに代表される、古典的な雰囲気を受け継ぎ乍らも、其処に甘んじる事なく現代性を宿らせ、近年の移民を取り巻く状況を見事に作品に落とし込んだライアン・ジョンソンの手腕には脱帽である。
アガサ・クリスティ的世界観を、巧みに現代版に昇華させた快作と言ってもいいだろう。