うりぼう

バベットの晩餐会のうりぼうのネタバレレビュー・内容・結末

バベットの晩餐会(1987年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

午前10時の映画祭13

映画祭13、1月の2本は、食べ物の魔法のお話。1本目は、甘いチョコが南仏の村に自由の風を吹き込む。2本目は、北欧の寒村、恋も捨て、信仰に生きた老姉妹と信者達の一夜限りの晩餐が奇跡を起こす物語。

その奇跡には、二人を心から愛した二人の男性がある。晩餐を料理するバベットを妹に託した歌手のパピン、姉を終生愛したローレンツ将軍は晩餐会に出席し、この料理を未体験の村人に導く。

姉妹の父は牧師、村人達の心の拠り所、素行の悪い若きローレンツは蟄居させられた先で姉と出会うが、その敬虔さに自らの未熟を悟り、その元を去る。芸に悩むパピン、自らを自然の中に置き顧みる。教会の歌声を聴き、妹の歌声を知る。妹への歌の指導を希望し、唄を通じて想いを伝えるが、妹は怖気づく。父を通じ手紙で拒否が伝えられる。パピンは、すごすごと村を去る。

父が亡くなり、姉妹は嫁ぎもせず、二人で質素な暮らしを続け、余剰は全て村人への施しに使う。雨の夜、バベットがずぶ濡れで訪ねて来て、お手伝いに置いて欲しいと頼む。パリの革命で自分の店も夫も子供も亡くし。行き場を失い、パピン氏に紹介されたと。無碍にできず、無給で居て貰うことになる。

多くの時を経て、残された娘姉妹の奮闘も虚しく、信者仲間の亀裂が頭痛の種となつてくる。父の生誕100年を祝う催しに、宝くじの当たったバベットがフランス料理の晩餐会を企画したいと姉妹に頼む。大層な準備品と生きた海ガメやウズラ等、大量の材料に姉妹は不安になる。

姉妹に8人の村人とローレンツ将軍、叔母が招待され、フルコースの食卓に着く。次々と饗される一流のお酒と料理、村人達の警戒心はあっと言う間に溶けていく。仲違いしていた相手にも心を開き、皆、お互いを赦し、心が通じ合う。「ハレルヤ」一択の彼も「同志」と。最後に妹の歌声で晩餐会はお開きとなり、始まる前の暴風から満天の星空に。

ローレンツは姉に自分の努力は報われたと告げ、これからも身は離れようと心は常に貴方を想うと伝えて去る。満足気な村人達、井戸を囲んで手を繋ぎ、賛美歌を歌う。見守る姉妹も嬉しげ。最後に残った村人が星空を見上げ、心からの「ハレルヤ」。

全てをやり遂げたと満足気なバベットに、姉妹はお礼を言い、パリへ帰るのかと問う。バベットは首を振り、ずっとここに居ると。彼女にとって、生きる喜びを取り戻したこの地が居場所。

何もないこの地にこそ、本当の心の安寧と静謐がある。でも、たまには美味しい喜びがあると、心豊かになる。
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