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サン・スーシの女のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

サン・スーシの女(1982年製作の映画)
4.1
劇場で観ていたらしばらく立ち上がれなかったことだろう。
1982年のフランス映画だが、40年経っても、いや戦後80年近く経っても、今なおこの状況が続いていて、そら恐ろしい。
ロミー・シュナイダーが二役で、反ナチスの書物を出版するドイツの出版社のミシェルの妻エルザと、その夫婦に匿われパリで育ったユダヤ人マックスの妻リナ役を演じている。気迫あり素晴らしい演技だった。

『暗い日曜日』を思い出した。
反ナチスの女性に執着するナチスの将校。

マックス少年の人生は波乱に満ちていた。美しい養母エルザへの恋心とナチスへの憎しみを抱え、マックスは人権擁護団体の代表になっていた。また、金融に強いユダヤ人として大手保険会社の社長でもあった。

マックスの人生は祖国から逃げざるを得なかった移民(亡命)の苦悩でもある。怯え、生き抜いても、いつ何どき、差別主義者が現れるかもしれない。

冒頭にも書いたように現代に続く差別主義。
責任を免れたナチスの残党とその支持者は形を変え、存在している。
40年前の作品とは思えなかった。


波乱に満ちたロミー・シュナイダーの遺作。
多彩で輝く瞳のマックス少年を演じたヴェンデリン・ヴェルナーは、数学者となり、数学のノーベル賞ともいえるフィールズ賞を受賞している。
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