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ロボコップのKuutaのレビュー・感想・評価

ロボコップ(1987年製作の映画)
3.7
近未来のデトロイト。警察を民営化し競争原理を煽るが、凶悪化する犯罪に手が回らず殉職者が相次ぐ。挙句には警察のストライキまで…。そんな中で24時間働ける警官ロボットを、というアイデアには必然性がある。完全なロボットは現場で柔軟に対応出来ないと分かり、サイボーグを採用する。

世界中どこでもあるような社内の出世争いが、物語の推進力となっていく。後に重役が悪と癒着するマッチポンプな関係が露呈して、ロボットが悪役に転じるのも無駄がない。今だったらドローンだろうなあ。80年代末のデトロイトといえば日本車の影響で大打撃を受けていたんだろうから、その辺も当時の観客はどう感じたのだろう。

面白いのが、ラストが「マーフィーが人格を取り戻す」良い話のように見えて、結局企業の言いなりな殺人マシーンという立場からは抜け出せていない点だ。オムニ社には悪い奴もいるし、良い警官もいる(相棒の女性の生死は分からないが)。社長はあのラストを迎えても、利益追求という目標は変えないだろう。良くも悪くもフラットな目線だと思う。

娯楽作品ながら、暴力描写、乾いた世界観、テンポの良さとユーモアと、バーホーベンのハリウッドデビューにして彼の作風がしっかり刻まれている。ベイジル・ポールドゥリスの勇ましいスコアも印象的。ミランダ権を告知しながらガラスに敵を放り投げ続ける場面笑った。

手首を落とされても復活し、水の上を歩き、水の色が変わる。キリストを意識しているらしい。人型ロボットによる殺戮と、人間性をめぐるテーマはそのまんまブレードランナーの影響とのこと。
合間に挟まるフェイクCMがかなり皮肉が効いていて、当時のレーガン政権の新自由主義的な資本主義観への批判のようにも見える。74点。
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