セガール幹事長代理

絞殺のセガール幹事長代理のレビュー・感想・評価

絞殺(1979年製作の映画)
4.5
息子の家庭内暴力に耐え切れなくなった男が妻と相談し息子を殺害するが、翻って妻が「息子をかえせ」って言い出すお話。

母親に対する息子の性的欲求や、母親も母親でなんやかんやそれに応えようとする画に対して「ちょっと無理」以外の感情が芽生えないし、事実、例えば私が、他意はないんですが、TSUTAYAの暖簾の奥のコーナーで、この子ええね、てな具合でよく確認もせずレンタルして自宅で鼻の下伸ばして再生したら女優の名前が母親と一緒だったことがあるんですが、余りのショックでしばらく立ち直れなくなった程です(そう考えると母親の名前と同一の女性と私は異性の関係になることが不可能である、という解が導き出せますがそれはそれで残酷です)

「直系血族」と「性欲」とはまさに反発し合うS極とS極の如く、本能的に引き合わないものだということは世間一般の認識として当然のことと言えますが、それはただの結果論であり、理屈の上では身近にいる最も自分を理解してくれる母という女性を色欲の目で見てしまうことは、これはこれで自然の流れなのかもしれないと、一瞬でも感じてしまった自分が嫌でたまりません。

本作において、「父」とは「息子」と「母」にとっての共通の敵として描かれます。
作中の設定において「父」は親から譲渡された財産によって生活を成り立たせ、その事実には蓋をし「息子」に対しては努力しないと成功しないと説教し、「母」には長い年月をかけて父が絶対君主であるかのように洗脳しています。その力関係の崩壊と息子の自我の崩壊(むしろ解放)がとても上手にリンクし、観る者の手に不快な汗を握らせます。

夫婦で相談して息子を殺害したのに、「息子を返せ」という妻は身勝手であると、観る前は思いましたし、事実今でもそれは変わりませんが、その姿は当に鬼気迫るものでありました。
江戸時代、直江兼続(なおえかねつぐ)という武将がおり、彼の配下家臣が下級武士を殺害しその被害者家族が兼続に「息子を返せ」と訴え、「わしは死者を蘇らせることはできないから君らが閻魔大王に交渉してくれ」といって家族を皆殺しにしたという事件があったのですが、そのやりとりを彷彿とさせるものです。

近親相姦、という言葉一つで解決できるほど物事は簡単ではないのです。前述の通り、だれだれが可哀想、とは簡単に言えるものではありませんが、世間的に狂った家族関係を垣間見ることのできる、とても面白い映画でした。

息子に敬称を付けちゃう女性におすすめ。