「あんまり死ぬのが怖いと死にたくなっちゃうんだよ」
北野武の暴力三部作の最後。「その男、凶暴につき」と「3-4×10月」のどちらとも地続きな雰囲気のする作品だった。
本作は前半の東京パートと中盤からの沖縄パートで構成されているが、ルックから何からそれぞれ別の映画のように見える。
東京パートでは「その男、凶暴につき」のように色彩をほとんど廃したモノトーン調に色調設定されている。そしてここでの武演じる主人公は「ヤクザ疲れた」と言うようにヤクザでいること自体に疲弊している。
一方、「3-4×10月」でも描かれた沖縄パートはキタノブルーと言われるような海、空、車などの青を基調に色彩が際立っていてまるで別世界。そこでの花火や相撲、落とし穴作りなどを無邪気に楽しむ彼は東京では見せたことないような笑顔をしている。
しかしそんな中にも常に暴力が側にある。浜辺での遊びで武はいつものように拳銃を発砲し、鑑賞者は緊張感から解放されることがない。同時に彼が何気ない日常も暴力から切り離せなくなってしまったようにも感じられる。
そして本作の暴力は前二作に比べて突発的なものが多い。バーでの最初の銃撃戦、浜辺の殺し屋など鑑賞者にそれを全く予感させないで発生するので、物凄い衝撃を受けるし、暴力そのものが強く印象に残る。エレベーターの銃撃戦も偶発的に起こる。
このように暴力がいつどこから現れるかも分からない世界で死への恐怖を克服するために彼が下す決断があまりに哀しい。
