まーしー

アイズ ワイド シャットのまーしーのレビュー・感想・評価

アイズ ワイド シャット(1999年製作の映画)
3.0
医師の夫ビル(トム・クルーズ)と妻アリス(ニコール・キッドマン)。社会的な地位があり、誰もが羨むような美男美女の夫婦。
しかし、妻アリスが過去に別の男性に惹かれた経験を告白したことから、夫ビルは街中をふらつき、長い一夜の冒険に出る——。
スタンリー・キューブリック監督の遺作であり、当時、実際に夫婦だったトム・クルーズとニコール・キッドマンが共演した官能サスペンス。

ストーリーは、キューブリック監督らしく深遠なもの。
深夜に街中を彷徨う夫のビルが出会った人々が後半への伏線となっているが、その解釈の仕方はそれぞれだろう。
出会った人々も濃い。娼婦、貸衣装店の親子、そして謎の仮面舞踏会に参加する人々たち……彼・彼女たちとビルの会話劇は濃密であり、1つ1つのシーンに深みを感じる。
一見、繋がりのない、独立した場面のようだが、物語の後半で繋がっていく。

一番印象に残るのは、やはり仮面舞踏会のシーンだろうか。
仮面をつけた男女が全裸で入り乱れる、それこそ乱交パーティーのようだが、何かの宗教的儀式のようにも映る。
何を目的に何を行っているのか、主人公のビルも観ている私たちも謎のまま。現実か虚構か、その区別すら判然としない。
ビルが出会った様々な場面に共通しているのは、「性」だろう。
娼婦の家、貸衣装店、仮面舞踏会、いずれにおいても性が直接的・間接的に描写されていた。

妻アリスが最後に言い放ったセリフ「ファック」だったことも含め、キューブリック監督が性をテーマにしたことは確か。
ただ、夢か幻か、色々と謎の残る世界観は、半人前の私の理解の及ぶところではない。