爆裂BOX

スポンティニアス・コンバッション/人体自然発火の爆裂BOXのレビュー・感想・評価

3.6
1950年代、ブライアンとペギー夫妻はシェルター内で放射能耐性を産む実験に参加し、見事実験は成功。その後、ペギーの妊娠が判明し、赤ん坊が生まれた8月6日、二人は自らの肉体から火を噴き焼死する…というストーリー。
タイトル通り「スポンティニアス・コンバッション=人体自然発火」を題材に「悪魔のいけにえ」のトビー・フーパーが監督したSFホラーです。
34年後、高校教師になっていたサムはある日自分の指先から火が噴き出したのに驚き、更に彼に接触した人物が次々と自然発火で死んでいく事件が発生。サム自身も感情が高ぶると身体から炎が噴き出すようになり、恋人のリサの勧めで病院へ行くことにするが、という内容です。
タイトル通り「人体自然発火現象」というム―何かではお馴染みの不思議現象をネタに製作したSFホラーですが、荒唐無稽な話を勢いで見せていく何ともフーパーらしい作品でした。
1955年を舞台にした導入部分は、プロバガンダ映画の使い方や焼死体から小さな頭蓋骨が出てくるシーン等製作者の確かなセンス感じさせます。
舞台が現代に移ってからは、主人公のサムが突然、指から火を噴出したことを切欠に、腕から火を噴出したり、会話してちょっとでも悪感情を抱いた相手が焼死したことから、恋人の勧めで病院に向うもそこで大きな陰謀や自分の隠された出生に気付いていきます。
見所となる人体自然発火現象は、最初はサムの指先から火が噴き出すくらいですが、腕にあいた穴から黒い血が流れ出たと思ったら勢い良く炎が噴き出してくるシーンはインパクトあります。最初の知人二人は会話やニュースなどで焼死したことが語られるくらいですが、ジョン・ランディス演じるラジオ局員が焼死するシーンは口から炎吹き出したりして何処かユーモアを感じさせるものになっていて面白かったですね。炎上するときの特殊効果は合成で、安っぽさがありますが、それが逆に何とも言えない味になっていたと思います。
主人公サムを演じるのは「チャッキー」の声担当でお馴染み異相俳優ブラッド・ドゥーリフですが、その演技は一度見たら忘れられないものがありますね。後半になるにしたがって自分の能力が人を焼死させると気づいても、尋問してきた警官や旧知の仲の警備員も躊躇なく燃やしていって、その暴走する姿は悲劇の運命に見舞われた主人公というより完全にモンスターですが、本作はフーパー監督なりの初代「ゴジラ」へのオマージュだそうで、そう考えると人ならざるモンスターとして描いている所も納得できるものがあるかな。
主人公の車に亡き父の懐中時計を置いていった女性は誰なのか、かつて実験に関わっていた女性ニーナが訪ねたサムに話そうとしていたことは何なのか等、謎が謎のまま放置されているシーンもあるんですよね。特に後者は師きりに話そうとしていたのにサムが聞かずに出て行っちゃって、その直後にニーナが殺されてしまうので本当に謎のまま。黒幕に加担していたマーシュも、目的はサムとリサの抹殺という全く違うものなのに何で今まで協力してたんだろ?サムやリサに注射しようとしてた薬品も一体何なのか?
ただ、そういうよくわからない部分もあるけどサムの暴走に従ってクライマックスもよくわからないけどなんかすごい事になっていって、でも最後は「ダークマン」みたいな姿になりながら恋人を救って何か感動的なファンタジー的な感じで唐突に終わるラストは、「何かよくわからないけど凄いものを見た」という感覚をもたらしてくれます。これは「スペースバンパイア」と一緒ですな。
人体自然発火という題材を、細部に穴があるとはいえ原発問題や水爆といったテーマと絡めつつ最後まで見せる勢いはフーパー監督らしい作品だったと思います。