秀ポン

かいじゅうたちのいるところの秀ポンのレビュー・感想・評価

3.4
のけもの扱いにキレていた子供が、かいじゅう達の集団の中心で暮らすことになる。
彼はそこでやらかしまくることで、また自分同様にやらかすキャロルの姿を見ることで、他人には他人の内面があることに気付き思いやりを手に入れる。
だいたいこんな話。

主人公のことはクソガキとして見ていたので、作中何度かある、調子に乗っていた彼がかいじゅう達の他者性によって脱臼させられる展開がめちゃめちゃ良かった。

例えば島に来た初日。家を壊すキャロルを手伝っていたら、その他のかいじゅうに詰められていた。
調子に乗って「ギャー!!」とか叫びながら暴れていたのに、急に詰められてビビっていたのが凄い良い。この落差!
急に来た知らないやつが家壊してたらそりゃ怒られるよ。

後半でも、良いものチームと悪ものチームとか言って調子に乗っていたところからの落差!
自分がずっとやりたかったこと(みんなの中心で王様になる)をやった結果、自分がやられて嫌だったことをみんなにやっちゃっていたという皮肉。それでマジで嫌な空気になっていたのが良かった。

その後にキャロルにビビりまくるのもめっちゃ良い。「小さな入り口の秘密の部屋」とか、小賢しすぎて良い。
そして結局キャロルはマックスがここに来た日のように全てをぶち壊す。
初日のマックスはキャロルと同じように家をぶち壊していたけど、今度はそれをぶち壊される側として見ることになる。
ここで彼はキャロルの中に、母親に当たっていた自分の姿を見る。

こんな風に、調子に乗っていたマックスがその調子乗りの結果の自業自得で痛い目を見るシーンがとても良かった。ザマァ。
マックスに対しては、小学生の頃の自分を見るような居た堪れなさがあり、できるだけ痛い目を見て欲しいと思いながら見ていた。
楽しく遊んでたはずが最悪の空気になったりとか、マジであったよな。こいつよりはまだ全然マシだったと思いたい。あー嫌いだ。

──映像面の感想。

めちゃくちゃロックのMVみたいなビジュアル。

動物フードのパジャマを着た子供と、頭の大きい着ぐるみ体型で土臭そうな怪物達。そいつらが森の中で物を壊したり、砂漠を歩いたり。
こういう絵が強烈にMVっぽい。

監督の経歴を調べたら、実際にMVを作っていたらしい。

このMVっぽさはどこから来てるんだろう。普遍的なMVっぽさというよりは、あの頃の(そしてきっと特定の界隈の)MVって感じなんだけど、あの頃って具体的にいつ?というのはハッキリしない。
とりあえず彩度を落とした色彩設計はMVっぽい感じがする。象徴的で、かつここがどこなのか等の答えがなさそうな場所(文脈のない場所?)もぽい。
あとはどうなんだろ。そもそもこのMVっぽさは他の人達も感じているんだろうか。
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