垂直落下式サミング

らせんの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

らせん(1998年製作の映画)
3.0
科学で超常存在をタネ明かしな続編。亡霊やモンスターよりも、現象としての「死」を踏襲する続編は、世界的にも新機軸な試み過ぎて戸惑ってしまう。
ウイルスなのか、呪いなのか、光通信なのか、永山貞子は何故ひとを呪うのか、小説においては重要なプロットであるが、これを映像として説明しようとすると、表現しようにも観念的なものにならざるを得ず、セリフでぜんぶ言うしかなくなる。だけどオカルトのエセ科学を言葉で講釈されると、あまりにも突拍子がなく、スットンキョーな理屈であるため、イカサマっぽさがどうしようもなく浮き上がってしまった。
論理の飛躍が起こる転結部にストーリーとしての盛り上がりを感じることができず、机上の荒唐無稽がイッキに超常的な異空間へと直結してしまう安直さは、如何ともしがたい。物語の筋は通ったままであるため、もっと慎重に組み立てて欲しかったところ。
なぜ、こうなるのか。どうして、こうなったのか。わかりたい。世界を。なぜ。どうして。このサスペンス的な欲求、それによる物語の推進力が保証されるのは、活字の世界においてのものだろう。
映画『リング』の続編としてみると、前作の後を引くような不気味さ不条理さを、ムリクリな整合性でつじつま合わせて台無しにしたように感じるけど、もともと原作はこうだったと思えば、じゅうぶんに楽しめる作品ではあると思う。
役者の面々は安定している。メンヘラ系の佐藤浩市にとって、前髪を切り揃えたおかっぱの中谷美紀がファム・ファタール。当然、貞子も。覆い被さることメンエスの如く。えちえちの亡霊。恐怖が伝播し、感染していく。映画は貞子の印象が強くて隠れてしまっているけど、リングの主軸は女たちの物語だった。中谷美紀に松嶋菜々子。Jホラーは、旬の女優たちによって彩られていたのですね。