1982年8月24日、
今はもう無い大阪・梅田阪急プラザ劇場にて鑑賞。
あの日も暑かったのを覚えています。
1924年のパリ・オリンピックに出場した二人のイギリス人青年。
一人はユダヤ人であることでの周囲の差別を反骨心に変え、試練を克服していくハロルド・エイブラハム。
もう一人は宣教師の家に生まれ、
神のため、信仰のために走ったエリック・リデル。
この二人の誇り高き姿を描きながら、
オリンピックの本来の意味を問いかけるこの作品にはとても感動しました。
そしてこの二人の対照的な姿が、
当時の英国の社会的な構図を描いていたことに感心。
物語は、
二人と同じ英国の選手団だったハードル選手モンタギューの、
既に故人となった二人を称える回想シーンから始まるのですが、
このオープニングシーンがとにかく素晴らしく美しい。
低く重たい雲が立ち込める海岸線を裸足で走る若者たち。
どの選手の表情も活き活きとしていて、
バックに流れるはヴァンゲリスによるテーマ曲。
このシーンを見ただけでこの作品は傑作だと確信しました。
ハードルの上にシャンパングラスを置いて練習するシーンは、
本当に映画的な美しさ。
ハロルドのコーチ役のイアン・ホルムの描き方もいい。
試合当日会場には顔を出さず、
ホテルの窓から英国の国旗が上がることでハロルドの勝利を確信するシーンもいい。
感動の押し売りがないんですね。
この年のアカデミー賞の本命は『レッズ』か『黄昏』だったのですが、
どちらかというと地味な英国作品である本作が作品賞、他を受賞しました。
もう40年以上も経っちゃったんですね。
でも、オープニングのモンタギューのセリフではないですが、
目をつぶるとあの印象的なシーンが克明に思い出すことができます。