オトマイム

華氏451のオトマイムのレビュー・感想・評価

華氏451(1966年製作の映画)
4.7
掛け値なしにまるごと大好き。
スタッフ&キャストの紹介から消防隊員たちが次々に登場するファーストカット…トリュフォーのオープニングってどうしてこんなにワクワクするんだろう。

本を読むことも所持することも禁止された近未来を読書好きのトリュフォーがどんな思いで作品にしたのか。5年前の『突然炎のごとく』で「本を焼くなんて…」と呟いたオスカー・ウェルナーが本作では本を焼く消防士(?)となり、焚書の中でアップになる何冊もの本に込められた愛が垣間見える。数秒間映し出されるトリュフォーらしい、唯一のラブシーンの流れるような美しさ。空中飛行する隊員たちの、子供だましのような拙い描写。そして何度みてもため息がもれるひそやかな森のシークエンス。

あなたの生涯の一冊は何ですか?鑑賞後に本への思いがあれこれ膨らむ。撮影が順風満帆というわけではなくトリュフォーにとってはさほど思い入れある作品ではないようだけれど、私にとっては遠く離れていてもずっとたいせつに思っている友達のような、そして会うたびに新鮮な、そんな作品。





二役演じたジュリー・クリスティが40年後の『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』で主演した女優だと今回初めて気づいた。少女のような澄んだ瞳を持つ美しいひとだった。むしろ歳を重ねてからのほうが素敵。