イチロヲ

ラースと、その彼女のイチロヲのレビュー・感想・評価

ラースと、その彼女(2007年製作の映画)
4.0
等身大の人形(ラブ・ドール)に愛情を抱くようになった青年が、我を貫きながら日常生活を強行していく。偏愛に目覚めた男の自己実現を描いている、ヒューマン・ドラマ。

本作の主人公は、女性の愛情を「慇懃無礼」と解釈してしまう人物。人形に「完璧な女性像」を投影させる心理はユングの元型論に通じるのだが、人形に惹かれる理由を主人公の口から安易に説明させないところが心憎い。

主人公の兄は、若い時分に早々と実家を出て、恋人と結婚して、子供をつくり、家庭を築いている。その一方で、弟である主人公は孤立主義を貫いたままであり、人形に現を抜かしている。そして、通過儀礼を済ましていないことへの焦燥感に苛まれる。

生身の女性から話しかけられたときの狼狽えぶりや、ボウリングのヘタクソな投球フォームなどが、若年期の筆者とそっくりで胸が痛む。さすがに人形に対して性的欲求を抱いたことはないが、筆者は無類のドール好きでもあるので、物凄く身につまされる。
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