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懺悔の一人旅のレビュー・感想・評価

懺悔(1984年製作の映画)
4.0
第40回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ。
テンギズ・アブラゼ監督作。

恐怖政治に翻弄された家族の運命を描いたドラマ。
真綿で首を絞められるような恐ろしさを感じる。独裁者による恐怖政治の隠された実態が犠牲者の娘の口から語られていく。人格者として市民に愛された市長の裏の顔が暴かれる。無実の画家夫婦に対し市長が見せる屈託のない笑顔が逆に恐ろしく、美しい画家の妻に歩み寄る市長の姿に猛烈な不快感に襲われるのだ。
市長にとって気に食わない人間が次々と投獄される。反体制派の危険思想の持ち主だから、というのはあくまで名目に過ぎない。気に入らない人間であれば、事実を歪曲してでも投獄してしまう。夫を投獄された妻が市長の足元に泣きつく姿に心が痛む。市長の持つ圧倒的権力の前では人々はあまりに無力だ。
そして、亡き市長が犯した許しがたい罪に初めて真正面から向き合う息子と孫の苦悩と絶望。息子が罪の意識に苛まれる様子が、抽象的で非現実的な映像世界の中に映し出される。
市長の名を冠した通りが教会へ通じていないことを示したラストカットが印象的だ。大罪を犯し、人々の信仰心すら軽視した市長に赦しなど永遠に訪れないことを意味しているようだ。
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