TakahashiKie

阿賀に生きるのTakahashiKieのレビュー・感想・評価

阿賀に生きる(1992年製作の映画)
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映画にも登場する旗野さん主宰の「冥土のみやげ全国連合」から一冊の本が出た。新潟に住むノンフィクションライターの里村洋子さんによる「丹藤商店ものがたり」。阿賀町で丹藤商店を営む3人の日常が丁寧に描かれた本である。
千駄木の古書ほうろうで同書のトークイベントをやるその前日に、同じく千駄木の谷根千記憶の蔵で「阿賀に生きる」「阿賀の記憶」の二本立てでの上映も行われた。
前置きが長くなったが、それに参加したので「阿賀に生きる」を観た。
かつて物流の要であった阿賀野川で舟を作り続けてきた遠藤さん、川沿いにある何百年も昔からある広い田んぼでコメを作る長谷川さん、大井町から帰郷し餅をつくる加藤さんの3人が主な登場人物。若かりしころの旗野さんも出てくる。時々フフフと笑えるような、暖かくてちょっとキュートなじぃさま、ばぁさまたち。そして時折挟まれる水俣病のはなし。遠藤さんの足の裏は感覚障害が残り、奥さんの手の甲はくにゃりと反ったまま。
旗野さんは「水俣病と言えば熊本ばかりが注目され、石牟礼道子やユージンスミスのような人たちもそこで生まれた。新潟だって同じように苦しんだ。だから阿賀で何か作品を作りたかった」と言った。私は間違いなくこの映画が1番好きだ。苦しみの中で生きてきた人が守り抜いてきた日常はなんと尊いことだろう。なんと暖かいことだろう。
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