三四郎

娘三羽烏の三四郎のレビュー・感想・評価

娘三羽烏(1957年製作の映画)
3.7
なんとも安易で単純な映画。同じコメディでも『婚約三羽烏』や『愛より愛へ』の方がかなり現実味があり洗練されていて面白い。比較するのも申し訳ない、二作品に対して…。
全体的に松竹大船調オマージュ作品と言えるだろう。

「この広い空の下のどこかに必ずステキな人がいる」1954年の松竹大船調『この広い空のどこかに』へのオマージュ!これも比べ物にならぬが笑
「ああこの広い空の下のどこかに…」「何か落としたの?」これには笑えた。

女官と式部省かぁ。長年の胸の悶え、許されぬ恋、この恋をせめて子供同士の結婚で…という親同士の願い。時代を感じる。戦前映画が面白いのはメロドラマが成り立つからだ、それも無理なく。なぜなら階級社会だったから。階級社会だからこそ悲劇も喜劇も二項対立で甘美哀愁romantisch に描けたのだろう。
上野の西郷さん前、目印は左胸の黄色い菊の花…天皇家ね。西郷さん前と言えば小津の1947年『長屋紳士録』ラストシーン。戦後間もなくは孤児達が屯していたが、1957年、10年後にはデート場所か。瑳峨と小山が歩く場所、田浦と小山が歩く場所、「気が遠くなるほど君のことが好きだ」これは1952年『お茶漬の味』と同じ撮影場所。あれはエンディングにおける津島恵子と鶴田浩二のシーンだったなぁ。

修羅場なのに突き抜けすぎた喜劇になってる。女たちのあの正直さというか恥じらいのなさというか男の気持ちを少しも考えない思い込みの激しさというか…。もっとコメディチックに演出したら、自己中心的な突拍子も無い喜劇告白にならないだろうに。青菜に塩ぶっかけた顔とは…真っ青ってこと?笑
いくら喜劇でもあの自殺話でっちあげはないな…。ここがこの映画を薄っぺらくしている。
プロポーズシーンは上手い!大木と瑳峨の間がいいね!
「これからは喜びも悲しみも一緒だよ」
「幾年月もね」キャメラが見上げていき…小ちゃな灯台を捉える笑
2ヶ月前に公開され大ヒットした『喜びも悲しみも幾歳月』をうまく使っている。

追記
田浦正巳は現代でも通用するようなハンサムボーイだと思うが、毎回二枚目役じゃない気がする。なぜ?あまり知られてない気がするが、私が知らないだけか?
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