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東京タワー オカンとボクと、時々、オトンのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

5.0
飲んだくれの自由人である“オトン”(小林薫)の家を出て、“オカン”(樹木希林)と幼い“ボク”は筑豊の実家で暮し始める。
炭坑町でオカンとその姉妹たちと暮す日々が続くが、高校進学を間近にひかえたボクはオカンのもとを離れて大分の美術高校に行くことを決めた。
オカンが小料理屋で働きつつ送ってくれる仕送りでボクは、自堕落な高校生活を送る。
やがて憧れていた東京に出て美大生になるに至っても、ボク(オダギリジョー)は自堕落な生活を送り続けていた。
故郷のオカンの励ましと学費の援助によってなんとか大学を卒業したものの、就職はせず、町金融で借金をかさねながら暮らす日々も次第に窮まっていった。
今の暮しぶりを知ったらオカンはどんなに落胆するだろうかと思い立ち、故郷との連絡を絶ち、心を入れ替えて生活を立て直す決心をするボク。
何でもかんでも仕事を引き受けてがむしゃらに働く内に、イラストレーター兼コラムニストとしていつの間にか食えるようになる。
借金も完済し、これでオカンに心配をかけることも無いと思っていた矢先、久々に連絡をとった故郷の叔母からオカンがガンの手術で入院していた事を知らされる。
ボクがオカンを心配させまいと連絡を絶っていた間、オカンもボクを心配させまいと連絡を絶っていたのだった。ボクはオカンを東京に呼び寄せ、再び二人で暮らすことにする。
上京したオカンを東京見物につれていき、今の仕事が一段落ついたら一緒に東京タワーの展望室に登ろうと約束するボク。
料理が上手で世話好きなオカンを慕い、家に入り浸るボクの友人たち。
毎晩のように訪ねてくる彼らにオカンは料理を振る舞い、オトンとののろけ話で彼らを笑わせた。
賑わいの絶えない幸福な生活がやって来たかに思われたが、間もなくオカンのガンが再発してしまう。入退院を繰り返す闘病の日々。
衰弱していくオカンの身体はやがて抗ガン剤の副作用に悲鳴をあげる。
あまりの苦しみ様に見兼ねたボクは、オカンの死期が早まる事を受け入れ、治療を断念する。
東京タワーを間近に見上げる病室で、副作用の苦しみから解放されて穏やかな日々を取り戻したオカン。
オカンを慕うボクの友人たちやオカンの故郷の姉妹たち、離れて暮しつつもオカンが慕い続けたオトンが訪ねて来てオカンの残り少ない時間を共に過ごす。
やがて、オトンとボクが見守るなか、オカンは静かに息を引きとった。
生前に約束を果たせなかった事を悔いつつも、ボクはオカンの位牌を持って東京タワーに登り、眼下に広がる東京の景色を一緒に眺めるのだった。
リリー・フランキーの同名小説を、オダギリ ジョー、樹木希林主演で映画化した、母子の絆を描いた感動作。
昭和の筑豊の炭鉱町で育った主人公・ボクが、平成の東京タワーの下で母・オカンを看取るまでを描く。
脚本は、『恋の門』の松尾スズキ。
酒飲みのオトンに苦労して女手ひとつで子供を大きな愛で育て上げたオカンを演じる樹木希林、オカンの愛に甘えぐうたらだったがイラストレーターとして大成するボクを演じるオダギリジョー、大きな愛と強い絆で結ばれた親子愛が、花札と笑わせることが得意なオカンたちが織り成すユーモラスなエピソードの数々(ボクが作って欲しい模型の舟を決して完成させてくれなかったけどデッサンを教えてくれたオトン、近所の友達と花札に夢中になって母親に怒られたオカン、など)や酒やギャンブルにはまってぐうたらな青春をおくるけどイラストレーターとして大成するボクの紆余曲折、東京に負けたオトンと東京に居残ったボクの東京に対する愛憎、オカンのガン闘病を絡めて、脚本の松尾スズキらしいユルいユーモラスな描写満載で描き、オカンの大きな愛がじんわり伝わる感動作です。
エンディングで流れる福山雅治の主題歌が、泣けます。
オカンが作る料理を囲むボクと仲間たちの団らん、ボクとオカンが東京観光するシーンが、じんわり温かくなりました。
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