ニャーすけ

チョコレートのニャーすけのネタバレレビュー・内容・結末

チョコレート(2001年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

正直、マーク・フォースターという監督の印象は「75点の映画ばっか撮ってる人」というものでしかなかったが、初めて観たこれは傑作。

根本的な問題として、ビリー・ボブ・ソーントン演じる保守的な主人公がそもそもそんなに悪い人じゃない(性格的には黒人への嫌悪感は無く、あくまでも折り合いが悪い息子への当てつけとしてレイシストを演じているようにしか見えない)のは若干の偽善と都合の良さを感じるが、旧世代から引き継いだ因習が取り返しのつかない悲劇を生んでしまう展開の説得力と、あの素晴らしいラストシーンの感動だけでお釣りが来る。自分は結末を観客に想像させるタイプの作劇に対して否定派だけど、「説明を放棄する」のと「問いを残す」のは似て非なるもので、後者の演出は全然アリだし、その中でも本作は特に成功しているもののひとつだと思う。

『バーバー』でもハマっていたソーントンの仏頂面芝居も良かったが、役者として出色だったのはやはりハル・ベリー。息子への虐待気質があったり、酔った勢いでだらしなく男とセックスしたり、ただの一面的な「可哀想な人」ではない複雑なパーソナリティを繊細に体現していたのは、本作でアカデミー主演女優賞を受賞したのも納得。めちゃくちゃ低レベルなことを言うと、吹き替え無しのベッドシーンもすげぇエロかった……。
今は亡きヒース・レジャーも、彼が決してジョーカーだけの一発屋ではなく、本作の時点で元から非凡な俳優であったことを思い出させてくれる。『ブロークバック・マウンテン』でもそうだったが、基本的にはワイルドで男臭い存在感を保ちつつ、それと相反する鬱屈を表現するのがこの人は本当に巧い。あの唐突な拳銃自殺はなかなかびっくりしたが、彼の技量があるからこそ成立した名シーンだったと思う。
あと、本作にはショーン・コムズとモス・デフというヒップホップ界の大物が出演しているが、なんでラッパーは軒並み芝居が巧いのだろう? 元N.W.A.のアイス・キューブが実は高学歴だったり、やっぱキャラとしてワルを演じている人が多いからか?

ちなみに、場面として一番面白かったのは、真にろくでなしの父親に黒人の恋人を貶められた主人公が、その報復にそいつを秒で老人ホーム(しかも黒人スタッフ多数)にぶち込むところ。行動が早すぎて思わず笑ってしまうし、老害クソジジィざまーみさらせとめちゃくちゃスカッとして最高。
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