バンバンビガロ

「A」のバンバンビガロのレビュー・感想・評価

「A」(1998年製作の映画)
3.8
森達也監督によるオウム真理教に密着したドキュメンタリー映画。
当時オウム真理教の広報副部長で教団と社会の接点となる立場にあった荒木浩という人物に焦点を当てることで、当時の教団の内情だけでなく、オウム真理教が起こした未曾有の事件に対し我々の社会がどのように反応したかを記録する貴重なドキュメントになっている。
この映画が捉えているのは人間の体が細菌やウイルスといった異物に対して過剰な免疫機能で反応するように、社会がオウム真理教という異常に思える存在に対し、徹底した嫌悪感を示し、時には適法な範囲を超えて排除しようする姿であり、それは有名な「転び公妨」の場面や激しい住民運動の姿からも顕著に見て取ることができる。
こうした過剰に思える反応も社会が正常性を取り戻すためのプロセスであり、それなくしては社会を維持していくことは難しいのかもしれない。しかしそこで排除されようとする者たちに対してこの映画は同情的であり、明らかな被写体への感情移入がそこには存在しているように思える。
そのような倫理的に混乱する部分を含めて非常に優れたドキュメンタリー映像であり、今の時代だからこそ見るべきところが多いとも感じる映画である。
バンバンビガロ

バンバンビガロ