佐藤でした

容疑者、ホアキン・フェニックスの佐藤でしたのレビュー・感想・評価

5.0
フェイクドキュメンタリーという形式で、ホアキン・フェニックスが突然ヒップホップアーティストに転向すると発表した時から、フェイクであった事を公表するまでの2年間を描く‥。

はぁー。最高でした。ゆえに以下、支離滅裂です。←


ホアキン・フェニックス。やはりこの人すごい人。ってか監督のケイシー・アフレックもすごい。この人たち、マジWANTEDです。うーん、誤解を恐れずに言うと、トリアー監督の「イディオッツ」を観た時のような胸のザワつきがあった。あと、ちょっとだけ、ジャッカスを観た時のような違うザワつきもあった(汗)

映画作品としてどうなのか、と考えてみてもよくわからないですが。108分間、ウソを並べ立てていたとしても、108分間、綿密に練り上げていたとしても、観客は映し出されたものを受け取るまで。カットの後に“嘘”や“本当”が有ろうと無かろうと知る由もない。
カメラがあって俳優がいればもうそこには劇が生まれ、カットしてツギハギすればそこには意図が存在し、何かに投影すれば観客が生まれる。
そこに“映し出したもの”も、“映り込んだもの”も、全部ひっくるめて「映画」と呼ぶ世界に、フェイクかそうじゃないかの線引きさえ無いのかもしれない、と思えてくる。

結局、ファンを、メディアを、仲間を利用して、本物のラッパーも、本物のステージも巻き込んで、騙したわけだけども、それぞれと対峙しているのは、ホアキン本人であるのは事実。2年間、映画に出演せずに周りに心配させたのも事実。
そこに“仕込み”はないだろうし、予期せぬアクシデントが起こる可能性はゼロではないが、“ハリウッドスターの座を捨てて、新たな夢を追い掛ける、落ちぶれホアキン・フェニックス”を演じる俳優ホアキンに怖いものなどない。最強。

むしろホアキン・フェニックス自体がホアキンの中にも存在していないのでは?と思えてくるほど、自分すらも騙して限界を越え、格闘しているようにも見えるのだ。その姿がかっこいい。

でも本当に、今作以降の「ザ・マスター」「her」「インヒアレントヴァイス」の怪演にはさらに磨きがかかったように見受けられるし、本当にこのとき、ホアキンは生まれ変わったのではないかと思う。

しかしまぁ今作の“落ちぶれホアキン”を演じるために体重増やしたのかなー。今作には2年を費やしたというけど、もじゃもじゃ頭と比例して膨らむポッコリお腹にビックリ。でも次作「ザ・マスター」の時には頬こけとるしなー。役者魂をフェイクドキュメンタリーで炸裂させるという偏屈ぶり。

結論。ふざけた寝癖こそフィクションだし、あわれむ人たちの目こそドキュメントだった。

今作には、わりと衝撃的なシーンも多々あるが、メガネのつるで吸うコカインも、俳優業に戻りたいという号泣も、乱闘も、ゲェーも、プライベートジェットも、お父さんに会いたいってのも、どれも“フェイク”なのかな。
子どものころ飛び込んだ川、とか言われると、どうしても兄リヴァーのことを思い出さないわけにはいかなくて‥

最後はなぜか号泣ですよね。はー

‥いやぁ、日課のように撮影して続編つくっていって欲しいわー。とか勝手なこと思うけど、そんなこと気安く言えないほどの力作、だったかも。
佐藤でした

佐藤でした