松竹三羽烏の中では、圧倒的に庶民派で、良い人で、穏やかなベビーフェイスの佐野周二。彼の為の、彼を活かした作品である。(息子の関口宏は、いつから似ても似つかない、世間に嫌われる大ヒールになったのだろう?)
ただのコメディと思いきや、そこは渋谷実。東京で散々人間関係に疲れて、愛媛の田舎に逃れた(強制的にだが)主人公が、結局この地でも、しがらみに嫌気がさして、東京に戻るまでを描いた作品。
何処に行っても、世間なんて純情な青年には、住みにくいのは一緒だと説いている。
脇を固める「黒澤組」の名優陣も素晴らしいが、
何と言っても、これがデビュー作の淡島千景の美しい事と言ったらない。
それまでの宝塚トップスターの片鱗を魅せる、ダンスステップのサービス・シーンも楽しめる。
手塚治虫でなくても、ホレボレしてしまう美しさだ。素晴らしい。