千年女優

日本のいちばん長い日の千年女優のレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(1967年製作の映画)
4.5
昭和20年7月26日に連合国の最終降伏要求ポツダム宣言が発せられても尚降伏の意志を示さないでいた日本政府。しかし8月6日の広島、9日の長崎への原爆投下により遂にその受諾を決定。一方で陸軍内部ではこれを良しとせず玉砕覚悟のクーデターを図る不穏な動きあり。かくして始まる太平洋戦争最後の一日を描いた岡本喜八監督作品です。

2015年に原田眞人監督によってリメイクされた1967年公開の原作作品で、原田版ではこの時直接描けなかった昭和天皇を登場させて各キャラの人物背景を見せてより多角的な描写を見せるのに対し、この岡本版は背景描写はダイジェストで済ませ、残りの時間を題名通りの「いちばん長い日」の描写に充てていて純度の高いものとなっています。

玉砕の美学に突き進もうとする継戦派も、それに対して苦渋の決断を下す降伏派も、相反するとはいえそれぞれに私利私欲の挟まないひたすらに純粋で崇高な理念としての高鳴りを見せていて、おそらく日本においてはこの後にも先にもこれ以上の議論がなされることはないと思わされるほどで、重厚で濃密な時間の体験に圧倒される一作です。
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