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日本のいちばん長い日のいのレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(1967年製作の映画)
4.8
戦争を忠実に描写した名作。

畑中少佐の憂国の必死の形相が素晴らしい。宮城事件を戦争の狂気として簡単に処理するのではなく日本の存続をかけた兵の賭けとして描かれており、この映画が1965年に公開されていたことは先進的であると思う。東條英機は戦後において大悪党などと称されるが、この映画では役人調の人物として描かれており、日本の戦争・日本型国家主義とはなんだったのかを考える上で大変興味深い。そして、笠智衆演じる鈴木貫太郎や、三船敏郎演じる阿南惟幾は人物が現前と私に語りかけてくるようであった。
俳優の評価もさることながら、その視点は定点に留まることなく戦争への価値判断、そしてこれから私たちがどうするべきかという解釈を全て視聴する側の私たちに委ねており、大抵の戦争映画に感じる窮屈さがなかった。戦争翼賛・反対という一面的なものにとどまらず、無限の可能性を帯びた映画だったと思う。
個人的には鈴木貫太郎・平沼騏一郎邸を襲撃していた佐々木武雄大尉の俳優が死ぬほど好きだった。『出家とその弟子』はすぐにでも買いに行くつもり。
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