いさんの映画レビュー・感想・評価

い

去年マリエンバートで(1961年製作の映画)

5.0

冒頭「静かな部屋で足音は熱い絨毯に吸い取られ、歩く当人でさえも何も聞こえない、まるで耳自体が廊下をずっと歩いていけば、古い時代の建物の広間や回廊をよぎる...」からあまりに吸い込まれた。これはもう一度>>続きを読む

エンド・オブ・キングダム(2016年製作の映画)

4.5

日本の首相がすごい速さで暗殺されるが、とにかく緊迫感がものすごく、大当たりであった。ロンドンで首相たちが次々暗殺されるシーンも陳腐ではなく、完璧だった。結末は割とアメリカ主義に依っていたが、第三世界の>>続きを読む

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー(1984年製作の映画)

5.0

明らかに全共闘運動を模して制作されている映画であり、学校に閉じこもる生徒たちの闘争と時間の問題を描いているわけで、確かにこれでは原作者は怒るなぁと。途中のタクシー運転手が村人全員が浦島太郎になるという>>続きを読む

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(2023年製作の映画)

4.6

純粋にめちゃくちゃ面白かった。ピーチ姫が戦う人間としてめちゃくちゃ強かったのもよい。

境界カメラ(2018年製作の映画)

4.8

異界で撮ったとされる映像のクオリティがとても高くて大満足だった。これはフィクションが何重にも張り巡らされていて、作中のメタ的解説(映像が演技であると解説が行われる)という補助線をみるならば、①異界で撮>>続きを読む

トリハダ 劇場版(2012年製作の映画)

4.6

ヒトコワものだが、日常に異常な人間が入り込んでくる恐怖が見事だった。普通に幽霊より肉体のある人間がそこにいるっていうのがめちゃくちゃ怖くて驚いた。

2046 4Kレストア版(2004年製作の映画)

5.0

この映画はおそらくウォン・カーウァイのなかで一番好きな作品になった。永遠の愛の「何も変わらない」場所、2046年は香港の一国二制度の終焉、すなわち香港人の中国への完全な帰化の年である。そこに向かって彼>>続きを読む

イメージの本(2018年製作の映画)

5.0

映像の到達点とも、フランス語芸術の究極的夢とも言っていいのではないかと思えるほど、全ては完璧に、イメージはイメージへと接続していく。戦争、革命、永遠、指、そうしたモチーフを分析することはこの映画におい>>続きを読む

犯罪都市 THE ROUNDUP(2022年製作の映画)

4.4

マ・ドンソクが安定して良いため安心して見ていられる。展開は前作と同じだが、海外編で仲間がいっぱい刺される。頭脳戦というよりマ・ドンソクが常に肉弾戦で勝つ話。

気狂いピエロ(1965年製作の映画)

5.0

これ、高校生時代に見ていたら影響を受けすぎておそらく抜け出せなくなっていただろう。ある種衒学的だし、男女の関係は様々な引用と詩的な散文によって埋め尽くされ、映画全体はそれによって高い芸術性を有するよう>>続きを読む

犯罪都市(2017年製作の映画)

4.4

マ・ドンソクの迫力がものすごいのもあるが、マフィア映画の迫力の覇権は韓国映画に移りつつあるように思う。コメディを挟みながらも無駄の一切ない完璧なカット(これは良くも悪くもある)で、画面を切り替え続けな>>続きを読む

花様年華(2000年製作の映画)

4.5

マギー・チャンとトニー・レオンが一緒に料理を食べるシーンなどは出色で、様々な画面技法を駆使しながらとても色っぽく描いている。多用されるスローモーションと音楽、そしてコントラストが直接的な恋愛を一切描か>>続きを読む

5時から7時までのクレオ(1961年製作の映画)

4.9

「私はバカで無能なお人形よ、不吉な歌で革命を起こす気?」とクレオが言っていた作曲家はミシェル・ルグランなのか。タクシーのシーンなど長回しで違和感はあったのだが、これはそのまま写しているからジャンプカッ>>続きを読む

ファンタスティック・プラネット(1973年製作の映画)

4.3

ポスターを見たときに気持ち悪いと嫌厭していたのだが、この映画においては人間の方が虫のように描かれていて気持ちが悪い。ドラーグ族がオム族と呼ばれる人間を飼い慣らそうとする映画。人間の宗教と性の話も描かれ>>続きを読む

俺たちに明日はない(1967年製作の映画)

4.9

アメリカン・ニューシネマの先駆的作品とのことで背筋を伸ばしてみたが、普通にめちゃくちゃ良かった。フェイ・ダナウェイがあまりにも美しく、恐慌という社会的不安を代表するかのように放浪する二人の姿は大変綺麗>>続きを読む

パーマネント・バケーション(1980年製作の映画)

3.8

街中を歩いているときに目に映る少し壊れかけてしまっている人たちを発見し、自己の世界の外界を発見する。「ちょっと外へ出ていてください」や「ここから消えろ」という言葉は、彼を次のシーンに送り込み、また次の>>続きを読む

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)

3.4

なかなか息継ぎなしに最後まで見切れるものではなかったが、主演の風格で最後の和解とも攻撃とも取れる一瞬が意味をなすような映画であった。しかしとにかく日本語が聞きづらい。坂本龍一とビートたけしほか主演たち>>続きを読む

デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)

4.6

久しぶりにめちゃくちゃ笑える映画を見た。途中wi-fiを探しながら徘徊するゾンビやエセ日本人のスターウォーズなど、おそらく映画のオマージュとして現れている話がめちゃくちゃ良い。あと全然関係ないが、ゾン>>続きを読む

ナイブズ・アウト:グラス・オニオン(2022年製作の映画)

4.2

探偵という存在が共産主義という真実を有する者と同等に現れたことを鑑みるならば、本作でブルジョア道徳に対して行われたような徹底的な批判は評価されて良いだろう。借り物ばかりの富豪という意味においても、一貫>>続きを読む

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密(2019年製作の映画)

4.1

群像劇としてレベルが高く、皮肉が効いていてかなり面白かった。「高い学費を払って、専攻はマルクス主義とフェミ詩論?」っていうセリフが良い。

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.6

イギリスで視聴。色々言われていたのでどのようなものかと思って行ってみたら個人的にかなりよかった。アメリカで広島長崎を描こうとしたらあれ以上にはできない。ノーランが『メメント』の作者であることを鑑みれば>>続きを読む

ミンナのウタ(2023年製作の映画)

5.0

最高のホラー映画体験をした。清水崇は全盛期に戻りつつある。口コミで言われていた通り本当に、ワンシーンだけ異常に怖すぎるシーンがあり、会場で目を開けられなくなった瞬間があった。扉が怖い。

邪願霊(1988年製作の映画)

4.7

アニメのレインも手がけた小中千昭による、Jホラーの元祖とも言える作品で、幽霊をリアルに映す小中理論の実践としてその後の0年代を築いたとも言える。技術としてのビデオ興隆期で、その恐怖と顔の映らない人間を>>続きを読む

日本の夜と霧(1960年製作の映画)

4.5

大島渚監督の総括的映画で、浅沼稲二郎事件ですぐに上映中止になってしまったという歴史をもつ。日本共産党内部における山村工作隊からうたごえ運動への指導方針の目まぐるしい転換のなかで振り回されてきた若者たち>>続きを読む

マガディーラ 勇者転生(2009年製作の映画)

4.4

新文芸坐オールナイト上映で視聴。バーフバリを2本見たあとで何が何だかわからなくなっていたが、怒涛の最後のシーンには時間を忘れた。バーフバリ一作目と構造が同じで、結末的スペクトルが提示された後に歴史が開>>続きを読む

バーフバリ 王の凱旋 ≪完全版【オリジナル・テルグ語版】≫(2017年製作の映画)

5.0

新文芸坐オールナイト上映で視聴。これはかなりすごかった。鉄と秩序を象徴する王バラーラデーヴァは古代的国家を「帝国」へと秩序化していくが、これは英雄への嫉妬によって行われる。帝国的秩序は神話的にはやはり>>続きを読む

バーフバリ 伝説誕生<完全版>(2015年製作の映画)

4.6

新文芸坐オールナイト上映で視聴。インドの神話的世界を完全にエンタメに振り切りながらも、過剰な演出とカメラワークによって表現していた。女性の幻に導かれて滝を登るところや、アヴァンティカとのダンスがめちゃ>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

5.0

開始5分で頬が湿っていると思ったら、泣いていることに気がついた。劇場でこんなにも涙が出たことははじめてで、心から良い映画だったと言わざるを得ない。少年期の思い出、父であり子であったわたし、創造を継ぐ者>>続きを読む

月は上りぬ(1955年製作の映画)

4.3

小津脚本で田中絹代が監督として参加、ショットなどは小津の影響を受けつつも別様の変節を遂げている。日本家屋とストーリーを巻き込みながら一致させていくのがすごい良かった。

偶然と想像(2021年製作の映画)

3.5

全体的にほとんどその良さを受け止めることはできなかったし、第二話についてはほとんど憎悪に近い感情が沸々と燃え上がってきて、みているのがつらかった。それは、登場人物全員がある種の偶然を前にして、それでも>>続きを読む

仁義なき戦い 完結篇(1974年製作の映画)

4.7

あまりにも面白すぎて完結篇まで一気見してしまった。大友勝利と市岡輝吉の談合での長尺では有名な「牛のクソにも段々があるんでぇ」という言葉があり、また初期から存在感を増していた槇原政吉が死んでしまい終わり>>続きを読む

仁義なき戦い 頂上作戦(1974年製作の映画)

4.6

群像劇として非常に面白くて、偶然的要素がどんどんと構想を悪い方向へ進めていくのはタランティーノが誉めたというのもわかる。頂上作戦で組長たちが一斉検挙されるシーンの打本の顔や最後の俺たちの時代は終わった>>続きを読む

仁義なき戦い 代理戦争(1973年製作の映画)

5.0

ヤクザ社会というものが戦争とともに訪れて、米ソ冷戦の代理戦争へと移行していくこととパラレルにタイトルはつけられている。今作は高度な政治合戦が主眼となっており、ほとんど宴会と圧力かけだけが描かれるが、個>>続きを読む

仁義なき戦い 広島死闘篇(1973年製作の映画)

4.7

繰り返し映される原爆ドームは広島抗争がまさに戦争、そして原爆の産物であることを示唆している。広能はほとんど狂言回しとして出てきている一方で、千葉真一演じる大友勝利がめちゃくちゃよく、また若き北小路欣也>>続きを読む

仁義なき戦い(1973年製作の映画)

4.7

ヤクザ同士で行われる政治やセリフ、暗殺のシーン含めめちゃくちゃ面白い。それだけでなく、闇市を原体験であると語る深作監督は、戦後の混乱からの復帰と暴力の悲哀のようなものをテーマとして有しており、その意味>>続きを読む

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