ヒロオさん

幸福(しあわせ)のヒロオさんのネタバレレビュー・内容・結末

幸福(しあわせ)(1964年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

妻と不倫相手を同時に愛し、「愛が2つもあって幸せだ」と喜ぶ男の話。

美しい音楽、可愛い色使い、幸せそうな家族の姿。なのに、話はドロドロ。監督は本作について、「これは柔らかくて可愛らしい桃だが、中身は腐っていて蟲が食っている」と言う。

後半で、夫が妻に不倫を打ち明ける。「悲しむことはないさ」と無邪気に愛の喜びを語る。妻は「あなたが喜ぶなら」と許す素振りを見せるが、その後自殺する。

夫が語る愛は愛ではない。彼は実質的に妻を自分の幸福を達成する手段としてしか見ておらず、箱庭を作っているようなものである。妻が意思や感情を持つ人間であることを無視しており、目に見えない暴力にも思えた。
一方、妻にとっての愛は、夫の幸せを理解することである。だが、努力しても相手から本物の愛は返って来ないし、本質的に自分は人間として扱われない。これまで抱いていた安心感が突如絶望に変わり、妻は耐えきれなくなったのだろう。
幸福に愛は欠かせない。だが、本当の愛を築いている人は、そこまで多くない気がする。所詮誰しも自分が1番可愛い。映画のように、愛をはき違えたり、一方通行になることは往々にしてある。相互に愛し合い、幸福を共有することは、普遍的に難しいことだと思う。愛や幸福には期待しすぎないことが大切だね。

通行人のフランスパンを勝手にちぎって食ったシーンが一番怖かった。
ヒロオさん

ヒロオさん