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幸福(しあわせ)のEyesworthのレビュー・感想・評価

幸福(しあわせ)(1964年製作の映画)
4.7
【代替可能な母】

アニエスヴァルダ監督、主演ジャン=クロード・ドルオと妻クレール・ドルオとその子供たちという実の家族が演じているヴァルダ初期の代表作。


〈あらすじ〉
妻テレーズと子供たちと暮らすフランソワは、郵便局員エミリと恋に落ちる。正直な彼は、ある日のピクニックで妻にありのままの事実を伝えた。そして、悲劇が起きてしまう…

〈所感〉
冒頭のひまわり畑を一緒に手を繋いで歩くシーンから絵に描いたような幸せな家族だなぁと我々に刷り込んませた上で、実は屈指のタイトル詐欺映画じゃないか!とラストで手のひらを返させられる迷作。あの奥さんってもしかして…。ここまでフリとオチが効いている昔の作品も滅多にないだろう。様式美すら感じた。そうか、妻や母というのは社会が作った枠組みであり、代替可能という特徴があるのか。その人がいなくなればまた別の誰かが役割を担える。綺麗事ではなく、現実問題そうしないと繁栄は望めないから。僕は確かに君を愛しているけど、別に君じゃなくてもウェルカム!が通用してしまうリアルさ。フランソワから見れば確かに以前と何も変わらない幸福。そう、幸福は今ここにある。失ったらまた拾えばいい。その辺に落ちてるから。幸福という感情にはある種の欺瞞が付き物なれのかもしれない。知らぬが仏。知らぬが妻。人は幸福のためなら嘘もつくし、どんな手段も使う。ただし、幸せのために結婚するのであって、結婚のために幸せになるのではない。目的と手段を履き違えてはならない。
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