さすらいの旅人

無宿 やどなしのさすらいの旅人のレビュー・感想・評価

無宿 やどなし(1974年製作の映画)
3.2
日本版「冒険者たち」+「スケアクロウ」映画。 CATV/日本映画専門ch録画視聴。

本作は男女3人の冒険活劇であるフランス映画の名作「冒険者たち(1967)」をモチーフに製作されたらしい。ただ、刑務所で知り合った中年二人のロードムービーから、アメリカ映画の名作「スケアクロウ(1973)」が本当のモチーフではないかという説もある。

高倉健と勝新太郎の当時絶大なる人気スターの初共演映画だ。
そして、紅一点の梶芽衣子がこの二人に絡む役どころだ。
この三人には夢があり、夢に向かって海底に眠るロシアバルチック艦隊のお宝の捜索を開始するが…。
特に梶芽衣子がいい。女郎屋敷からの抜け駆け役を演じるが、不幸な生い立ちの悲しみと同時に、海を見たいという未来志向の女性像も見事に演じていた。一か所ヌードを披露するが、明らかに「ボディダブル」で残念。

スタッフは勝新が名作「津軽じょんがら節(1973)」を観て、痛く感動したスタッフたちだ。
特に監督の斎藤耕一は元々カメラマンであり、望遠レンズの魔術師と言われるぐらい映像に凝っている。本作も田園や海洋風景など構図が絵画的で何処を切り取っても素晴らしい。
音楽も日本映画には珍しく哀愁をおびたメロディーが流れる。

ただ、映画としてのシナリオは、私は好きではない。あくまで2大スターのための映画のため、遠慮が感じられて優劣なく演出していた。そのため緊張感がないのだ。ラストも平等な演技で中途半端に終わり余韻か全くない。
まあ、70年代あるある映画の一つだが、2大映画スターが共演したお宝映画と言えるので良しとしよう。