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背徳のメスのotomisanのレビュー・感想・評価

背徳のメス(1961年製作の映画)
4.0
 阿倍野とはどんな山奥なのか?夜間当直で道頓堀まで夜遊びとはずいぶんヒマな病院だ。そのうえ何語でしゃべってるのか?ただおかげで高廣の取り澄ましが倍増しになって事件ものにはなかなか効果的だ。
 かえって、大阪ことばでみんながしゃべったらどうなるだろう?案外誰も死なないで高廣ベビーラッシュに終わりそうな気がしてきた。揃いも揃って親父本人が取り上げて、これでは黒岩重吾から告訴されそうだ。
 半世紀経ったって男の本性が進化するとも思えないが、女の反応はドえらく変化した . . . だろうか?こちら何とも分からない。最後、婦長さんが山村と公開相対死を遂げるが、その真相を婦長さん、第三者にして蛇蝎のように見てた高廣にだけ憎いを突き抜いたように打ち明けるのだが、この訴えたいけど訴えられない気持ちは今のヒトでも思いの大分を占めるのかもしれない。告白文を焼き捨てて口を噤むだろう高廣がそれでどうするだろう?魘されそうな夜々の連続を思うとそそられてしまう。
 高廣、山村、ヤクザ亭主とそろって女なんぞと蔑んで扱うのが色の違いで奴隷にしようかというのと同じ風に見えてくる。ひとり殺されて、もひとり殺されかけて、半ばまで「女地獄」を殺し尽くした物語世界、あとひとりの女衒と「半殺しの高廣」はどうなるのだろう?そう思うと半世紀前の男たちはこれを見て改めて靴下と女はなんて以上の事を感じたろうか。

 変わりそうに無いといえば、医療ミスの事もある。ヤクザ亭主、金づるが死んであとは病院を訴えるばかり。高廣を締め上げれば有利な証言は間違いなしというところだろうが、黄表紙ジャーナル垂涎のネタ満載の高廣が証言するのかしないのか。いづれ魘される夜の高廣の事、逃げて場末で腐れるのが目に見える。
 それにしても、今でも立証が難しいといわれる問題、金でカタがつくんだろうけれど何かの間違いでも法廷闘争になったらヤクザ亭主にも一分の何とかというところだろうか。そして、死んだ山村のその死の背景も衆目を集め、いづれ半殺し高廣への関心が彼を追い詰めてゆく事だろう。証拠書類を隠滅して終わったように見せたこの話、無さそうで、もしあったらの展開の想像を掻き立ててくれる。
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