三樹夫

新仁義なき戦いの三樹夫のレビュー・感想・評価

新仁義なき戦い(1974年製作の映画)
4.2
仁義なき戦いシリーズは大ヒットを記録。柳の下にドジョウは2匹も3匹もいるが社是の東映は、なんと『完結編』を公開したその年に本作を公開、1作目の『仁義なき戦い』から約2年でストーリーが基本同じの本作を公開し早速リブートをしかけるという、興行師精神あふれるのがこの映画。ストーリーは1作目の『仁義なき戦い』とほぼ一緒でキャストが若干違うくらい。
1作目の『仁義なき戦い』で省三が土居組長を襲撃したところからこの映画はスタート。その後は刑務所入って、山守組の内紛に巻き込まれ、坂井的な盟友との対決に至ってしまうと1作目の『仁義なき戦い』をかなりなぞっている。坂井を演じていたのは松方弘樹だったが、今作ではトミーが合流。他にも安藤昇が仁義なき戦いシリーズに初合流しているが、金子信雄が役名そのままに山守を演じていたり、役名こそ違うが田中邦衛が槇原的な役を演じていたりする。

フカキンはヤクザのマヌケ話を放り込むことでバイオレンスの中にユーモアを混ぜていたが、よりマヌケさが強調されているのがこの映画の特徴になっている。例えば田中邦衛の手旗信号などはヤクザの中におけるマヌケ話の良い例だろう。指詰めたら吹っ飛んでいって皆で捜索、指じゃなくて腕斬り落とすバカなど、ヤクザから聞いた実際のマヌケ話を仁義なき戦いシリーズは盛り込んでいるので、手旗信号も本当にあった話なのか。青木が盃を返す際に拳銃出して撃たれるのではないかと大声出して狼狽えるシーンも、『仁義なき戦い』で省三が煙草を取り出そうとして坂井が狼狽えるシーンのリメイクなのだが、『仁義なき戦い』では松方弘樹のリアクションが面白いながらも、省三と坂井の友情に決定的な溝が出来てしまっていることが露呈する、菅原文太の表情も相まってどこか哀しさもあるシーンだったが、今作では完全なマヌケなシーンとして描かれていた。

仁義なき戦いシリーズは、縮図としてのヤクザ社会や、政治劇や、ユーモアや、バイオレンスなど様々な要素を楽しめるが、青春映画としても傑出しているのが良い。下の名前だっり、苗字だったり、ちゃん付けなどでお互いの名前の呼び方で距離感が表されている。仲のいい者がいつの間にか対立しているなど、青春映画としての側面がかなり強い。関係に亀裂が入るのはまあ大体は山守が悪いんだけど。今作の山守はのっけからケチ全開。
後、仁義なき戦いシリーズというか、フカキンの実録ヤクザ映画は鍋がほんと美味そう。飯食うってなったら基本鍋食ってる。
三樹夫

三樹夫