1969学生運動時代のイタリア青春映画②
原題:「Plagio(盗作)」。
当時日本で爆発的人気を呼んだレイモンド・ラブロックの出世作。挿入曲「ガラスの部屋」は後にお笑い芸人ヒロシのテーマとして使用されている。
学園闘争で流血の日々が続くイタリアのボローニャ大学。医学生マッシモと恋人アンジェラはドライブの途中で、ファシスト学生から暴行されていた若者ゲイド(レイモンド・ラブロック)を助ける。二人はこの若者の謎めいた純粋さに魅かれ、いつしか禁断の三角関係に陥っていく。両親を事故で亡くしたゲイドは愛に飢えていた。。。
映画史上初めて美青年同士のBL要素を盛り込んだ作品と考えられる。謎の青年ゲイドが志す“男女3人による純愛”は、既成概念からの超越という点で革命の時代を反映している。その心情は一筋縄では理解し難い。ゲイドには両親殺害の過去が示唆され、何らかのコンプレックスが過剰な愛の希求に繋がっているようだが最後まで明らかにはされない。精神分析学的な謎解きが求められる筋立ては同時代のイタリア・ジャッロ映画と共通している。
劇伴にはハードなシャウト・ロック「Morning」と、後に「ベニスに死す」(1971)で有名になるマーラーの交響曲第5番が繰り返して使用される。カンツォーネ風の「ガラスの部屋」が流れるのはラジオからの一度だけ。このチグハグな感じも映画の混沌具合を助長して面白い。
自殺者の棺は教会の外に置いて葬式を行うというカトリックのしきたりは初めて知った。イケメンの男は結局は反革命的で、女性は真っ直ぐな愛を受容するという構図は、同じく大学闘争時代のイタリア青春映画「ゲバルトSEX」(1969)と同じ。振り返ってみるとイタリア映画全般に同様の傾向があるように思えてくる。ヴァチカンを有するイタリアのキリスト教文化が影響しているのだろうか?
世界中で日本でだけDVDが発売されカルト化していることも興味深い。公開当時、本作と主演ラブロックの日本での人気は凄まじく、森永チョコレートCMに出演し「恋は風」という日本語歌唱のレコードも発売されたとのこと。日本女性には儚げ寂しげな少年性を愛でる文化が流れているのかもしれない。本作を観ながらBLの発祥とされる漫画「トーマの心臓」(1974:萩尾望都)を連想したが、同作が人気になる下地を本作が準備したようにも思える。