ダイヤモンド

放浪記のダイヤモンドのレビュー・感想・評価

放浪記(1962年製作の映画)
3.0
こんな詩があった_。

“私は野原へほうり出された
赤いマリ
力強い風が吹けば
大空高く
鷲の如く飛び上がる
おお風よ叩け
燃えるような空気を
はらんで
おお風よ早く
赤いマリの私を叩いてくれ“

それに芙美子の言葉「私が詩を書いているのは、これだけじゃないんだぞ。私の人生はこれだけで終わるんじゃないぞ」。

いつも腹をすかし、金に追われる日々。
それは面相にも表れていて、僻みっぽい、しみったれた顔つき。
終生の放浪癖が芙美子を翻弄するのだけでも、悲観的になりすぎず、根に楽観的なところがある。
それに彼女はただの“ものぐさな放浪者”ではない。いざと言う時には、(人品の卑しい者に対して)はっきりと物申すだけの気高さがある。
幼少期の「バカタレ!」。
カフェ女給時代の「馬鹿野郎!」。
そして大家になった時でも「馬鹿野郎って言ったおやりよ」。
上記の言葉は、彼女の芯を表すもの。

林芙美子の自伝的小説『放浪記』の映画化。時代を超えた普遍性のある人生訓に、しばしばハッとさせられました。