一人旅

シベールの日曜日の一人旅のレビュー・感想・評価

シベールの日曜日(1962年製作の映画)
4.0
第35回アカデミー賞外国語映画賞。

戦争で記憶を失った青年ピエールは恋人マドレーヌと同棲中。ある日、ピエールは父に捨てられ寄宿学校に預けられた少女フランソワーズと出会い、交流を深めていくが・・・。

友人含めピエールの周りの大人たちは二人の関係に対して疑いを強めていく。
もちろんピエールに非道徳的な欲望など一切ない。ただ単純に少女と遊んでいるだけだ。
記憶を失くしているピエールは純真無垢な存在と言える。悲惨な戦場や戦争がもたらす死を含めた全ての過去を忘れているからだ。その点では、青年ピエールと少女フランソワーズはお互いの年齢は違えど精神世界は似通ったものがあるのかもしれない。それに二人とも傷ついた存在だ。だから二人は心が通じ合ったのだと思うし、お互いがお互いを必要としていることも納得できる。

しかし、そんな二人を周囲は許さない。汚れなき親愛の情を、ピエールによる一方的な禁断の愛だと勝手に決め付ける。偏見の色眼鏡を持つ大人たちによって二人の関係は引き裂かれていく。会食の席でピエールが周りの友人たちをグラスを通して見つめるシーンはその象徴とも受け取れる。グラスを通じて見た大人たちの顔は歪んでいる。真実を見抜けない大人たちの曇った心を暗示しているようだ。
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