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十二人の怒れる男のyaekoのレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
4.1

自分ひとりだけが主張する意見を持ってるとしたら、彼のように貫けるだろうか、、、わたしにはかなり自信がない。
空気を読んだり、無言の視線を感じたり、そういうのにきっと耐えられなくなってしまうと思う。ひとりの命がかかっている場面で、それで良いはずないのにね。

昔、ディベートをするときは、例えば相手の意見に反する時は、その人の意見を否定しているのであって、その人自身のことを否定しているのではない。でも否定された人は、自分自身のことを否定されたように感じることがある、的なことを読んだか見たかしたことがあって、この映画を観ていてそのことを思い出した。

まさに疑問を呈した彼は、これはあくまで、推理であって真実は分からないと、自分の意見を包み隠さず全部主張していて、すごいなと思った。疑問が残るようであれば無罪、なので今回は意見がまとまったけれど、実際可能性の話をしたらキリがないし、人間の行動の複雑さをわたしは映画を通して感じているので、全てのことを全ての人に納得するように説明するのは相当に困難なことだと思ってる。時代と共にテクノロジーも人の価値観の多様化も進んで、それはますます難しくなった。

まさか最後にとんでもないどんでん返しが来るんじゃないかと、わたしはその可能性さえ勝手に感じてハラハラしたし(そんなことはなくて正統派で良かった)、真実を見つけ出すっていうのは不可能に近いことなんじゃないかとまで、色々この映画を見て思った次第です。

でも、ワンシチュエーションでもこんなに面白い映画を撮れるって本当、すごい。
トイレでの会話があったり、夕立が降ったり、ところどころちゃんと環境の変化があって、閑話休題的な要素も話に緩急を付けてるよね。

最後、机の上に彼らの過ごした時間が雑多に映し出されたのが妙に好きだった。
95分でこの内容なんて、名作に違いない作品だった。
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