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十二人の怒れる男の指の小指のレビュー・感想・評価

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
4.5
シドニー・ルメット監督による1957年の作品。時間的にも空間的にもコンパクトな法廷ドラマの中に映画の面白さが詰まった傑作。フォローさせて頂いている方々の高評価も納得でした。

ある18歳の少年が父親殺しの罪で裁かれる裁判。陪審員が全員一致で有罪ならば少年は死刑。証拠や証言は圧倒的に少年に不利な状況で12人の一人である陪審員8番だけが無罪を主張するー。

今年一番の暑さという日、蒸し暑い密室で行われる先行きの見えない議論には苛立ちを隠せない陪審員も多い。時間経過と共に上がっていく怒りのボルテージ、増えていく発汗量。

それを陪審員8番の冷静な言葉と劇中の夕立が重なる様に、クールダウンされ変わっていく皆の心模様が味わい深い。

物語としても、職種や人種等お互い身の上も知らず集められた12人各々の人間性、そして事件の詳細や矛盾点が少しづつ分かっていく構成は非常に見応えがありました。

自ら証拠を調べたり法廷で質問出来ないアメリカの陪審員制度では、如何に審理の中で見聞きした事柄から想像力を働かせて判断するのかが重要かが分かります。

そして全員の総意でないと採決は下らないところ、物的証拠が無く状況証拠だけでは不十分なところは、このシステムの脆弱性でもあり希望でもあると感じさせてくれるものでした。

“偏見は真実を曇らせる”

⚖️
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