1984

十二人の怒れる男の1984のネタバレレビュー・内容・結末

十二人の怒れる男(1957年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

これはもう何回も見た神作。

人物造形が本当にすごくて、こういう人いる、見たことあるっていう既視感を感じさせられるリアルさ。似たようなスーツの紳士が12人もずらずら並んでいて、誰が誰やらわからんっていうストレスがないのもすごい。

まず同調圧力に屈しない意志強マンの8番(建築家)。それから周りの目を気にして合わせていたけど本当は熱いハートの9番(人情派のご老人)と5番(スラム出身で3番の偏見に激昂。被告少年の代弁者的役割)。穏健派の1番(進行役。好き勝手に主張する陪審員たちに振り回されてちょっとかわいそう。しっかり者で良い人)、2番(一見気弱そうだけどハートは熱くてちゃんと主張する)、6番(自分の頭で考えるよりお上に委ねたい。この人が転向したとき胸熱だった)、11番(口髭の時計職人。責任感強くて実直。移民だから差別主義には抵抗強い)。日和見主義な7番(帽子。野球のことばっか気にしてて有罪無罪はどうでもいい)と12番(黒縁メガネ。コミュ力高いけど無神経)。最後の方まで有罪派の4番(冷静な理論派。10番3番とは違ってフェアなタイプ)。頑なに有罪派の3番(男らしさ押し付けマン。息子に対する個人的な恨みつらみを同じ属性の別の人すなわち被告少年にぶつけちゃう)と10番(あいつら生まれつきうそつきだから犯罪者だーって何も考えずに口にしちゃう差別主義者)。

ディベートを通して描かれる12人の心理描写も見事。有罪派が無罪派に変わったのって論破されたからだけじゃないよね。3番10番の粗暴な態度に2番5番6番11番あたりがだんだんイライラを募らせていっているのが表情や言葉の端々に表れている。人間って感情の生き物だから、論理的な説得より個人的な好き嫌いの方がよっぽど影響大きいのがよくわかる。

ただまあご都合展開ではある。こんなプライド高そうな人たちがこんな簡単にはいはい負け負けって折れるわけがないよね。
そこはご都合展開だけど、なんだけど•••この映画の掲げるほとんど楽観主義といってもいいくらいの前向きな姿勢が好きで、見るたび胸が熱くなる。

正義って本当に難しくて、ある人にとっての正義が別の誰かにとっては悪になってしまう。永遠に答えは出ないから、いつまでも戦争や差別がなくならない。作中では無罪派が正義として扱われていたけど、反対側に立って見れば殺人犯である可能性の消えていない少年を無罪放免にすることは全然正しいとは言えない。
でもそれでも対話を通じてより善い道を模索することは決して無意味ではないよ、立ち止まらずに疑問を持ち続けることにこそ希望があるんだよっていうのが、この映画が熱いディスカッションを通して伝えたいことなんだと私は受け取りました。
なんてまぶしい、人間愛に満ちた明るい進歩主義。
いろんな問題が山積みのこんな時代だからこそ、もっともっと見られるべき作品だと思います☺️
1984

1984