一人旅

恋人たちの一人旅のレビュー・感想・評価

恋人たち(1958年製作の映画)
3.0
第19回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞。
ルイ・マル監督作。

夫婦生活に不満を抱く若妻ジャンヌと彼女を取り巻く三人の男性の四角関係を描く。
ジャンヌ・モロー扮する妻ジャンヌの物憂げな表情が印象的で、内から溢れ出る並々ならぬ欲望と願望が彼女の一貫性のない行動の中に表出されている。夫アンリは仕事に忙しいものの、決して甲斐性無しの男ではない。だが、ジャンヌは現状の夫婦関係に漠然とした不安、停滞感を感じているようで、そうした状況から脱するために必死に新たな愛を獲得しようともがくのだ。ジャンヌはスポーツマンのラウールに想いを寄せる一方で、出会ってからまだ日も浅い学者のベルナールにも心を惹かれてしまう。新鮮味を失い停滞した生活からの脱却こそがジャンヌの目下の生きる目的であり、夫以外の男性との間に愛を得ることはその手段に過ぎなく思えてしまう。
ジャンヌの周りをうるさく飛ぶ一匹の蠅を叩き潰したり、夫アンリが仕掛けた罠にかかった魚を逃がしてやるシーンでは、田舎の豪勢な邸宅で閉鎖的な暮らしをしてきたジャンヌの潜在的な願いである、心の解放と自由の獲得を暗喩している。
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