ブタブタ

ゾンゲリアのブタブタのレビュー・感想・評価

ゾンゲリア(1981年製作の映画)
4.4
敬愛してやまない「不遇の天才」ダン・オバノン脚本作。
ダン・オバノン監督・脚本作品は数有りますが、何故か軒並み邦題が意味不明でセンスの欠片もありません。
原題は『DEAD&BURIED』死んだ者と葬られた者とでも訳せますでしょうか。
本作の邦題『ゾンゲリア』は80年代のスプラッター映画全盛期と言う背景や当時のヒット作ゾンビ+サンゲリアを混ぜた如何にも安易な安っぽいb級ホラー映画テイストですが内容はスプラッターではなくホラー+ミステリーと言った趣きです。

アメリカの片田舎のある浜辺にカメラマンがやって来ると金髪美女が居て鼻の下を伸ばしてパチパチ撮影しているといつの間にか地元の皆さんが周りにワラワラ集まって来てカメラマンはボコボコにされた上に魚網でがんじがらめに固定されガソリンをかけられ火をつけられ生きながら火炙り。
上品なご婦人もパイプ加えた人の良さそうなご老人も何故かその様子をカメラで何枚も撮影する。
保安官ダンはこの異常な事件を捜査するうちに恐るべき真相に辿り着く…と言うものですが、「ゾンビもの」として宣伝されてはいましたが所謂人を食うロメロ・ゾンビは登場せずストーリーは不気味な街とそこに暮らす人々、謎の残虐猟奇殺人と密かに進行するある計画と言う完全にミステリーと言っていいもので、アメリカの寒々しい田舎町の風景や不気味な人々や古くからある呪術的信仰やカルト的に「何か」に支配されている民衆などクトウルフ神話を思わせるお話しでした。

[ここより多少ネタバレ、申し訳ありません]





人を食うゾンビではなく、見た目は生きてる時と全く変わらない人間が実はゾンビで周りの人間がいつまにか生ける屍に変わっていて街そのものが死者に乗っ取られて行く、ゼイリブやボディスナッチャー等の侵略SFでもあり、冒頭の丸焼きにされた男が全身大やけど包帯だらけのミイラ男状態で生きてて、病院に居ると例の金髪美女がナース姿でやって来て恐れおののく男の目玉に長い針の注射器をぶっ刺して殺したり、鼻に刺したチューブから硫酸を流してドロドロに溶かしたり、今の目から見たら作り物丸出しですが残酷シーンも気合いが入っており、けして多くはありませんが随所随所に挿入されるスプラッターシーンが良いアクセントとなり、それとは対称的にお話し自体は淡々と不気味に進んで行き全体を覆う不安感と緊張感、謎解きと恐怖、そして最後のどんでん返しと極めてクオリティの高いホラーでありミステリーでした。
この作品『シックス・センス』の元ネタとも言われているのですが(ここ迄書くともう分かっちゃいますが)「ゾンビは教えられた事以外憶えられない」とか、あとロメロ・ゾンビとは全く違うゾンビなのに「ゾンビが生前の行動に従って行動している」というのもロメロ・ゾンビとの共通点があって面白かったです。
ブタブタ

ブタブタ