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鉄路の白薔薇の一人旅のレビュー・感想・評価

鉄路の白薔薇(1922年製作の映画)
3.0
アベル・ガンス監督作。

機関車の運転士シジフと彼が想いを寄せる養女ノルマの人生を描いたドラマ。
サイレント作品で上映時間は180分を超える。第1部「黒の交響楽」と第2部「白の交響楽」の2部構成。
悲哀に満ちた物語で、血の繋がりのない娘に恋してしまうシジフの苦悩、家族の経済的苦境、そしてシジフを襲う予期せぬ不幸とその後を描いている。シジフからノルマを奪おうとする資本家の男も登場し、家族の絆が引き裂かれる原因となるのだ。
養女に恋してしまう育ての親というのもどうかと思うが、シジフの愛は純粋そのもの。ノルマは社会の底辺で必死に生きるシジフが抱える唯一の希望だ。それなのに、そんなシジフの純粋な愛情は様々な内的・外的要因によって邪魔されてしまう。
素晴らしいのが、映画の前半と後半でノルマに対するシジフの愛のかたちが変容していることだ。それはシジフが望んでいたものではなかったのかもしれないが、人生に対する諦観とノスタルジー、そしてより穏やかな心情でノルマを優しく見守るシジフの姿が印象的だった。
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