寝木裕和

ガッジョ・ディーロの寝木裕和のレビュー・感想・評価

ガッジョ・ディーロ(1997年製作の映画)
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音楽ありきの映画であるというのは、確かにそうだと思う。
しかしその、「ロマの人々の音楽をベースにした作品を撮りたいのだ!」という、自身もロマの血を引く者であるトニー•ガトリフ監督の気概によって、物語に力強い説得力を持たせることに成功しているのも事実。

歴史的に虐げられてきた者の、生活に根差した音楽、音楽に彩られた生活… に、フォーカスを当てたいという初期衝動。

そう、初期衝動がすべての原動力になるのだという当たり前の事を再確認させてくれる映画でもある。

ロマの人々の音楽を「資料」として持ち帰ろうとした主人公:ステファンがそれらを自らの手で葬り、弔いの踊りを舞うラストシーン、それを眺め静かに微笑むサビーナに、未来への灯を点そうとする監督の目線を感じた。
寝木裕和

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