こんな非業の死で幕を閉じる物語なのに「切ない…」と思えないのは、どこかで現代の感覚で見ると納得しかねるところもあるプロットだからだろう。
けれども、そんな中にも時代を超越した人間の愚かさみたいなものも浮かび上がっていて興味深い。
それにこれだけの衣装/映像美への拘りを目の当たりにすると、それだけでこの作品への世界的評価が高まったというのも頷ける。
どこを切り取っても額に入れて飾りたいような素晴らしい映像が続く。
上皇に仕える渡部渡の妻、袈裟に恋をして、どんどん常軌を逸した行動に出る盛遠。
武家側の人間だけに、欲望のままに行動してしまうというのは分かる。
しかしここにも現代にも通じるマチズモ思考のカケラみたいなものが見て取れるように思う。
愛、なのか。
その人を所有したい、のか。
「愛されるために愛するのは悲劇」
… なんとなく、ふとラジオから聴こえてきた藤井風の歌詞とリンクしてしまった。