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告白のliのレビュー・感想・評価

告白(2010年製作の映画)
3.4
話題になってた頃観たいなあと思ってから機会が無く時が過ぎて、公開から10年以上経ってることに驚きを隠せない。そんな古い作品に思えない。

松たか子のほぼ独白とも言えるような生徒への語りには、かなり引き込まれた。淡々と、飄々とした松たか子の雰囲気はどの映画でもあまりに強烈で記憶に残る。一言目から、彼女の抱える重荷が読み取れて、一気に不穏な空気を作り出してしまう。けれどそんなのお構いなしな中学生たちとの対比。多感な時期の子どもたちは、視野が狭いからこそ多感なのかもしれないと思わせられる。

被害者も加害者も子ども。あまりにも心がざわざわとして、どんな展開にも正解を見出せず、明かされる全てが最悪の方向に向かう。子どもたちの演技が良かった。初めは創作チックなサイコパス感に身構えたけれど、その中にも自身の未熟さ、あどけなさ、幼さを自覚できずに自我だけが強まっていく時期の子どもの特徴がしっかり描かれていたように思う。
まだ誇れるものなど無いのに、無くたっていいのに、プライドだけが高まって道を見失い、何者かになろうとして、自分の中のトラウマを最悪の形で糧にし、理想の自分を形作ってしまう。それを嫌というほど感じさせる、本当に疎ましく、憎らしく思えてくる演技をこなしていたのが、素晴らしかった。

正直中盤の傷を舐め合う男女生徒二人のやり取りは盛り込み過ぎ感もあってリアリティに欠けるように思えたけど、子どもが抱える寂しさや本音を大袈裟に表現するなら、ああいうのも有りなのかな。でもやっぱ無駄なくどさを感じてしまったな…この映画に入れ込むべき要素なのか?と思ってしまった。あそこだけ別の映画の感覚で観てしまった。
それに反して、過干渉な母親の下で孤独感と罪悪感と恐怖に苛まれて壊れてしまった共犯者の子には、心を抉られた。中学生の中途半端な自我の形成が一気にボロを出して崩れ去る様はあまりに痛々しい。あの子の演技の必死さは素晴らしくて、この映画の題材の残酷さが浮き彫りになる大事な要素だった。

結末は個人的には嫌いじゃない。現実味はあまり無くとも、この映画自体の締め括りとしては相応しかったんじゃないかなと思う。曖昧な綺麗事で蓋をせず、残酷な余韻を残して物語が収束する。復讐の中に詰め込まれた怒り、悲しみ、憎しみ、弱さ、絶望、自棄…それらがスパークして散り、誰も避けられないほどに満遍なく降り注ぐ。人が人を愛したり、憎むことが、この世界でどう作用するのかは誰にもわからない。たとえ、それを自ら告白したとしても。
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