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道のkojikojiのレビュー・感想・評価

(1954年製作の映画)
3.9
 フェリーニが日本で人気を得るのは1957年キネマ旬報ベスト・テンで1位になった本作からである。
 「道」は1954年ヴェネチア映画祭に出品、ルキノ・ヴィスコンティの「夏の嵐」と争っていた。共産主義側のリーダーと目されていたルキノ・ヴィスコンティを排斥しようというしているとの噂がながれ、その対抗馬がフェリーニであった。
しかし結果は金獅子賞は「ロミオとジュリエット」銀賞が「波止場」「七人の侍」「山椒大夫」そして「道」だった。

#1293
1954年 イタリア🇮🇹映画
監督: フェデリコ・フェリーニ
音楽: ニーノ・ロータ
脚本:
フェデリコ・フェリーニ
トゥリオ・ピネッリ
エンニオ・フライアーノ

 放浪の旅芸人のザンパノ(アンソニー・クイン)に一万リラで買い取られたジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)は頭は弱いが心は素直だった。
 ザンパノとともにオート三輪で旅をするうち、芸を仕込まれ、女道化師となる。
二人の旅が続く。ジェルソミーナは自分は生きる価値もない人間だと思っていたが、ザンパノはジェルソミーナなしでは生きていけないと友人から教えられ、いつしかザンパノと夫婦になることを夢み始める。

 ジュリエット・マッシーナはフェリーニの実生活においても生涯の伴侶であり、フェリーニの映画にも数多く出演している。
 フェリーニは、この「道」のジェルソミーナは元々彼女をイメージして書いたとのことであり、制作時、相当の反対があったにも関わらず、彼女の出演は絶対に譲らなかっとのエピソードがある。
 結果は監督の思惑通り。彼女で本当に良かった。
 ラスト、ザンパノが彼女を思い、泣き崩れる真夜中の浜辺、彼女が映し出される訳でもないのに、天使のような彼女の愛おしい微笑みが画面いっぱいに見えてくる。純粋で愛嬌たっぷりのあの笑顔がどれだけこの役に適していたのか、このシーンで思い知る。驚くなかれ、あのアンソニー・クインが思わず泣かせるこのシーンを見事に演じて見せるから。
このラストシーンは素晴らしい。

 私が最初に買った映画音楽サウンドトラック盤の1曲目はこの「道」の「ジェルソミーナ」だった。ニノ・ロータのこの切ない調べは映画音楽史上最高傑作の一つと私は思っている。

2023.07.13視聴326
フェリーニ1/23
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