ブタブタ

幻魔大戦のブタブタのレビュー・感想・評価

幻魔大戦(1983年製作の映画)
3.0
角川アニメ第二弾の『少年ケニヤ』が大林宣彦監督によるエンターテインメント性や観客を拒絶する様な実験映画だったけど、改めて見るとこの第一弾『幻魔大戦』の時点で既に既存のアニメファンを無視する様な実験的アニメだった事が分かる。
『幻魔大戦』originとも言うべき少年マガジン漫画版は石ノ森章太郎、平井和正共作による作品で、平井和正による『真幻魔大戦』更に漫画版から枝分かれしていく平行世界の『幻魔大戦』等などストーリーも世界も膨大に広がって行き矢張りというか未完。

と思ってたら先頃石ノ森章太郎漫画版『幻魔大戦』のラスト「月が…」から始まる直の続編『幻魔大戦Rebirth』によって見事に50年越しの完結となった。

アニメは平井和正小説版の三巻目辺りまでを原作とする映画オリジナル作品。
石ノ森漫画版の持つヒロイック、冒険活劇的なテイストはなりを潜めて非常に観念的・哲学的・宗教的な作風である。
超能力バトルアニメを期待してたら拍子抜け、期待外れだったと思う。
作者である平井和正先生もこのアニメは完全否定しちゃってる。
大友克洋によるキャラクターは、それ迄この手のアニメにはおよそ登場しない様なデザインでリアリティがあって斬新。
特にサイボーグ戦士ベガのデザインが『AKIRA』のタドンやフライングプラットフォームみたいな曲線主体のシンプルなデザインで小説のイラスト、生頼範義による宇宙鎧武者みたいなベガとは一線を画すオリジナリティに溢れた見事なデザイン、キャラクターになってた。

上野の森美術館で開催された『生頼範義展』で生頼範義版ベガのフィギュアが展示されてたのですが生頼範義版ベガもアニメで見たい。
『真幻魔大戦』の徳間ノベル版表紙も生頼範義による物で、石ノ森章太郎そしてアニメの大友克洋ともまた違う、リアルかつハードな生頼範義によるキャラクターやイラストレーションの『真幻魔大戦』がアニメで見れたらスゴいだろうな~等と素晴らしい原画の数々を眺めながら思ったものでした。
漫画版『幻魔大戦』は言わばスーパー石ノ森大戦で(之は続編Rebirthで顕著となる)ラストシーンにはサイボーグ009やさるとびエッちゃん等の石ノ森キャラクター達が沢山登場して終わるのですが、出来ることならアニメでもあの「月が…」の打ち切りエンドをやって欲しかったです。

追記
漫画版ラストページの見開き。
集結したエスパー戦士達が見上げる空には髑髏面の月が地球に迫って来る場面で人類の敗北を暗示して終了する。
これをアニメをやったとしたら大友克洋デザインによるさるとびエッちゃんや009の面々、更にそこに『童夢』の超能力少女も混じってたらそれだけで五億点アニメになってたと思います。
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